story 3~メイドのモニカ~








私はモニカ、アンリ様に使えるメイド。
生まれた時から傍にいる、アンリ様の忠実なメイド。
生まれながらにして、麗しく聡明なアンリ様はいつも私の心を掴んで離さない。
自分よりも遥かに劣る双子の兄君にもお優しく、慈しむ心を忘れない。
この方こそ、これからの未来をになっていく存在であると私は確信している。

そんなアンリ様の成長をこの目で片時も離れず焼き付けることが出来る私は何と幸せなことだろうか。













「モニカー!」











今日は護身術のレッスン、このレッスンだけは何があってもサボろうとしないアンリ様。
おてんばで、ワガママで、でも寂しがり屋で、意地っ張りで、時に残酷な程の冷たさを見せるアンリ様は、まだ5歳と言う幼さで確実にマフィア界を生き抜くすべを身に付けておられるアンリ様。













──自分の身は自分で守らないと、誰が家族を護るの?











その当時まだ3歳のアンリ様は、眠る時ぬいぐるみが手放せない甘えん坊さんだった。
けれど、兄弟の中で誰よりも賢く大人の会話を聞いて育ってきたアンリ様は本能的にマフィアでの生き方を感じ取っていたものと思われる。
…本当に、恐ろしいほどの才能だ。

レッスンが終わったのか、笑顔で駆け寄ってこられる姿はとても愛らしく年相応に見える。
あちこちに擦り傷が出来ているが満足そうに笑っては私に飛びつくアンリ様。










「お疲れ様です、アンリ様。」
「ああ、楽しかったわ!武道家の方々は一緒にいて飽きないわね!彼にもお茶の準備を!」「畏まりました、アンリ様。」














言われるがままにアンリ様と護身術の先生の分お茶をいれる。
今日はアンリ様の大好きなセイロンだ。

…それにしても、今回の先生の容姿には、さすがの私も驚くばかりだ。














「スマンな、気を使わせちまって。」
「いいえいいえ!ゆっくりしていって下さいまし!」











黒いスーツに同じく黒のボルサリーノハットを深くかぶり、特徴的なモミアゲが目に付く。
武道家とは思えないほどキッチリとネクタイを締め、レッスンが終わったあととは思えないほど涼し気な顔だ。
そして何より驚きなのは…













「私よりも小さくて幼いのに、そんなに強いなんて素晴らしいです!!」
「こう見えて俺はオメーよりもはるかに年上なんだ、あたりめーだろ。」
「アハハッ!何それおもしろーい!」
「冗談じゃねーぞ、マジだからな。」
「はーい、リボーン先生!」













アンリお嬢様とはまた違ったオーラを秘める赤ん坊。
歳の近い遊び相手といえば隼人坊っちゃまくらいのアンリ様は、嬉しそうにはしゃいでいる。
…だが、元殺し屋の私の直感が告げている。
あの人はただの武道家ではない。
幾つもの死線をくぐり抜けてきた、そんな闇の男だと。

小さすぎる体からは想像も出来ないほどのオーラに、思わずゴクリと固唾を飲み込む。
私よりもはるかに小さい赤ん坊なのに、この赤ん坊に仕掛けられてアンリ様をお守りできるかどうか不安なのだ。
それほど、彼の実力は計り知れない。














「一体どこでそんな技を身につけるの?」
「パオパオ老師から教わったパオパオ拳法というんだ」
「アハハハ!何それ、おかしいーっ!」












…けれど、あんなに笑うアンリ様を見るのは久しぶりだ。
本当に、楽しそうに笑っていらっしゃる…。
ここに水を差すのは悪いだろうと、静かに、けれど注意深く、見守ることにした。













story 4~メイドのモニカ~




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