story 7~力になりたくて~




最近、アンリの様子がおかしい。
お父様と不仲なのは以前からだけど、ここ数週間ほどから言う事を聞かないどころか、手当り次第に物に当たるようになった。
ついこの間まで、私のことも「ビアンキお姉さま!」とよく慕っていてくれたのに、視線を合わせることもなく避けるようになった。

何があったのかとお父様に聞いても、分からないとばかり。
アンリの世話をしているメイドに聞いてみても知らないの一点張り。
その他のメイドに至っては何かに怯えるように詮索を断られるのだ。

アンリは何かを隠している、それは分かっているのに、何を隠しているのか全く検討がつかない。

まだあんなに幼いのに、頭が良すぎるが故に知らなくていいこともたくさん知ってしまったアンリ。
あの、小さな身体では抱え切れないほどの思いを抱えているからこそ、ああやって人や物に当たってしまうんでしょう?

ああ、可愛いアンリ。
隼人には何かと話しているようだけれど、少しおっとりとした隼人には何が何だかさっぱりと言った様子。

…私に話してくれたら、どんな事でも相談に乗るし、困っているなら助けてあげれるのに。
私なら、少しは力になれるかもしれないのに…、












「あら、アンリ。どこへ行くの…」
「別に。」














ほら、今日も目すら合わさずにすり抜けていく。
貴女はまるで風のよう。
掴むことの出来ない風は、穏やかだと思わせておいて突風へと変わる。
ああ、アンリ…、










「…可愛いアンリ、力になりたいだけなのよ。」












まだ幼い私では、何も出来ない。
貴女を励ますことすらも。


















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