第一章〜友情の足枷〜

28page 死ぬ気





「ウジウジしやがって、ウチのダメツナといい勝負だな。」











小さい体で腕を組み、机の上に飛び乗る赤ん坊。
名前は確か、リボーンと言った気がする。

何が起きているのか分からずに、頭の中がパニックになる。

何でまた、この子がここに?一体どうやって?













「だ、だめ…!ここは、本当にダメな場所なの!恭弥さんに見つかったら…」
「オメー、どこにいても恭弥さん恭弥さん…だな、聞き飽きたゾ。」










慌てて外にだそうとすると、ガチャリと冷たく重い音を立てて突き付けられた銃口。
ヒヤリと冷たいその感覚は鉄そのもので、リアルに感じた。












「ぼ、僕、何して…」
「オメーは、山本武がどうなろうと良いんだな?」
「…え、」











唐突に出たのは山本くんの名前。

そして、とっさに浮かぶのは、太陽よりも眩しい笑顔と優しさ…。

その優しい笑顔が、眩しかった。
みんなの人気者で、スポーツも出来て、優しくて、みんなの中心。
…羨ましかった。
でも、












「だ、って、だって、痛いの、辛い…、話したり、近寄ったりしたら、また、また…っ」













まだ身体中に残る傷を抱き抱え、ジクジクとした痛みに震える。

校則を破ったら、お仕置き。
風紀を乱したら、お仕置き。
約束を違えたら、お仕置き。

それは、私が抱えた罪による罰。
仕方ないって、分かってる…、けど、辛いんだよ。












「キミには、キミには分かんないよ!何をしても私はダメで、弱くて…っ!!どう使用もできない!!!」











思わず、大きな声で叫んだ。
泣きじゃくりながら、自分でも驚くほど大きな声で。

すると、リボーンくんはニヤリと笑って、強く額に銃口を押し付けた。











「じゃあ、いっぺん死ね。」
「え…」
「死んで、もういっぺん自分の人生見つめ直してこい」













──諦めんのはそっからにしろ




ズガンッ!













撃ち抜かれたのは、私の額。
それは熱くて、熱くて、痛いとか、そんなんじゃなくて。
ただ、走馬灯って有るんだって思って。

思い出すのはここ最近の事、山本くんとの思い出。

山本くんは、何度も何度も、クラスから孤立した私に話しかけてくれた。
こんな、文字通りド真面目な格好をした私にも、分け隔てなく優しくしてくれた。

なのに、私は彼に何か返してあげられただろうか?
…返事すら、ろくに返せなかったじゃないか。
寧ろ、私は山本くんを酷く傷つけてきた…。

謝ることも出来ずに、私死ぬの?


熱い、撃ち抜かれた額が熱い。


…私、山本くんに謝りたいなぁ。
冷たくしてごめんね、無視してごめんね、キライって言ってごめんね…。

友だちになろうとしてくれて…、












「…ありがとうって、まだ言って、ない」












ボウッ!!

撃ち抜かれた額が燃え上がるように熱い。
あれ、おかしいな… 、私死んだはずなのに、起き上がってる。













「珍しいな、死ぬ気弾を撃ったのにこうも冷静でいられるのか。」
「…ありがとう、リボーンくん。お陰で私、目が覚めたよ。」











パンパンと制服のスカートを払い立ち上がる。

リボーンくんが何か言ってた気がするけど、お礼の挨拶だけを言って私は笑って見せた。

恭弥さんが出ていったのどれくらい前だっけ?
走って間に合うかな、ああ、スカート邪魔だな。






ビリリリ!!






私は規則正しいスカートの丈を思いっきり破いた。

だってもう死んでるなら一緒だよね、校則破っても。













「…あはは、身体が、軽い。」











大きく伸びをして、考える。
きっと山本くんがいる屋上は、最後に会ったあの屋上…、何となく感が告げている。












「急がなきゃ。」












私は応接室を飛び出し、走った。

体が軽い、まるで羽根のよう…。

ああ、私ってこんなに身軽なんだ、こんなに自由なんだ。











「ああ、私、鳥みたい」











気分はそう、籠から解き放たれた金糸雀の様。

目指すのはただ一つ、











「…死ぬ気で、山本くんに謝らなきゃ。」












だって、彼を死まで追い詰めたのは、私なんだから。








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(とんでもねーお宝、掘り当てちまったかもな。)


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