第一章〜友情の足枷〜

27page 現実逃避への扉






「…ははっ、バカみてぇ、俺。」










屋上のフェンスを乗り越えて、景色を見渡してみた。
青々しい空に眩しすぎる太陽、照らされて出来る影は俺の闇みたいで吐き気がした。

目下には登校してきた生徒がちらほら見える、楽しそうに笑いながら歩くその姿でさえ眩しく見えた。

何もかも、眩しいんだ、今の俺には。
野球しか取得の無い俺には、初めて好きになった女の子にどう接していいかもわからない、それどころか怖がらせて、傷つけて…。

どうすればいいかも分からないまま、俺は大切な利き腕をダメにしちまった。

なんのために今まで練習してきた…?
なんのために今まで努力してきた…?
いままで、なんのために…











「…消えちまいたい、」













ただ、ただ切実に、そう思った。











──────────────────────











私は今朝言われた通りに、教室にはよらず応接室に居た。
部屋には私と恭弥さんだけで、それ以外の人たちは外に待機させられてる。

…私が風紀委員の皆さんを差し置いて、空調の効いた部屋にいるのはとても心苦しいし居づらいんだけど、恭弥さんの命令だから仕方が無い。

…こんなに、ゆっくりと勉強に取り組める日が来るなんて。
当たり前の幸せをひしひしと噛みしめながら、遅れを取り返そうと必死に勉強する。

恭弥さんは何やら難しそうな顔をして、さっきから書類を見比べている…、何かあったのかな?

ともあれ、平和なことには変わりない。
私はまた教材に向きなおろうとした、








バンっ!



「委員長大変です!どうやら、山本武が屋上から飛び降り自殺を図っているようです!!!」









血相を抱えて飛び込んできた風紀委員の人。











「え…、」











その人の言葉に、私は持っていたシャーペンを手から落とした。











「…君、今ここは立入禁止何だけど?」
「は…、はいっ!す、すみません!!ですが、並盛で飛び降り自殺など、並盛のちつじょ…ゴフッ」










恭弥さんは、ただ冷たくそう言い放ち、風紀委員の人が全ての報告を終える前にトンファーで殴り飛ばした。
その人は外の壁にものすごい勢いでぶつかり、気を失ってしまったようだ。

その事にも私は血の気を失いそうだったが、山本くんが自殺を図っていると聞き更に気が遠くなった。
あんなに、明るくていい人で、そんな、自殺なんて程遠い人が、一体なぜ…?










「…僕は少し様子を見てくる。唯はここで大人しく待ってなよ。」
「あ、は、はい。わかりまし、た。」
「絶対に出ちゃダメだよ、一歩でも出たらお仕置きだからね。」










パタン──






扉の閉まる音が、嫌に耳に残る。

でも、いくら気になっても扉から出ることは許されない。

だって、恭弥さんからの言いつけだもの、破ったらまたお仕置きされてしまう…。
それに、恭弥さんが向かったんだから何とかなるはず、何とかなる…










「そんなに気になるなら行けばいーじゃねーか」
「っ!?」












突然聞こえてきた可愛らしい声。
それはいつの日か出会った赤ん坊だった。










27page 現実逃避への扉



(そこへ逃げ込むことも)(そこに閉じこもることも)(全てが"逃げ")


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