第一章〜友情の足枷〜

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ふらふらと、おぼつかない足取りで校舎の中へと姿を消した山本。

一応声をかけてやったが、もう何も聞こえていないだろう。
いつも真っ直ぐで光に満ちたその瞳には絶望が宿っていた。










「…これから先、ずっとその絶望が、お前を苦しめるだろう。」











クククッと、喉の奥で笑いをこらえる。
きっと、今私の顔はひどく、醜く歪んでいることだろう。

ああ、カワイソウな山本武。
華鈴 唯というこの世の宝に思いを抱いてしまったが故に、もうまともな人生を歩むことは出来なくなってしまったのだから。
なんて、哀れで、滑稽な。
これが笑わずにいられるだろうか…?











「クッ、ククククククッ、無理だろ!!」













よじれそうになる腹を抑えて、私は笑いに顔を歪めた。

どいつも、こいつも、バカげている!!
あの華鈴 唯を誰も彼も自分のモノにしようともがき苦しみながら生きていく、そんな姿が滑稽でならない!
お前らごときに扱いきれる女ではないというのに、お前らごときが触れていい相手ではないというのに!










「ああ、あああ…、ダメだ、ククククククククッ、こんな顔では、クククッ、華鈴さんに会えないじゃないか…。」












ひとしきり笑ったところで、パンっ!と両頬を叩いた。
すると、それはいつも通りの蝶原 紀伊千。
華鈴 唯のトモダチである、蝶原 紀伊千。











「さあて、と。オトモダチ、頑張りますか。」









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(え、私は誰かって?…クククッ、誰でもないよ。)


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