第一章〜友情の足枷〜

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何でだ、何でだ、何でだ。

ブンッ!ブンッ!ブンッ!

いつもの河川敷、違うのは俺の練習風景。
ただただ、闇雲に、思いをかき消すように振るバット。
頭に残って離れないのは、楽しげに話す華鈴とツナの姿。
…俺の時は、あんなに怯えて、あんなに怖がって、あんなに避けようとした癖に。
俺だってお前を助けたい、力になりたい、もっともっと、頼ってほしい…。
でも、お前は俺を避けるんだ、俺がどんなに歩み寄ろうとしても、見向きもしないで走り去ろうとする。
何でだ、何でだよ華鈴…、俺、馬鹿だからわかんねぇよ!!!










「ッらァ!」











ブォンッ!!!

いくらバットを振り抜いても、頭ん中のモヤは消えなくて。
ただ残るのは不安と嫉妬と苛立ち。
あんなに好きで頑張ってきた野球だって見に入らなくなって、チームの期待を踏みにじってる。
情ねぇ、俺はこんなに弱い人間だったのか?こんなにダメな男だったのか…?













「何、やってんだよ!俺!」











ブァンッ!!!


ここ一番、振り抜いたときだった。
手汗で滑ったバットが、空高く舞い上がり勢いよく落下してくる。
このままだと、顔面直撃だ…、その瞬間はまるでスローモーションのようだった。
ただ、ただ本能的に、頭をかばった。
俺馬鹿だからさ、両腕でかばったんだ。


…馬鹿だよなぁ。










ゴキッ











鈍い音が響いた、近くを通りかかったおじさんが慌てて駆けつけてくれた。

ああ、もうすぐ大会なのに。
野球しか脳のない俺は、利き腕なしで一体どうしたらいいんだよ。
…自慢できることなんて、野球しかねえのに。
くそ、くそ、くそ、上手くいかねぇな。

その後は親父に連れられて病院いって、ギプスはめてもらって。
明日が来なければいいのにって、そればっか思ってた。














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(俺たのは腕なのか、それとも俺の心なのか)


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