第一章〜友情の足枷〜
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課題を出し終わり、教室に戻る途中。
珍しく校内に風紀委員が少なかった、何があったんだろう?
不思議に思いつつも、廊下を小走りで駆け抜ける。
思ったよりも先生の話が長くてHRは断念した所だった、きっと話は通してくれているだろうけど、1限目はあまり好きじゃない先生からのテストが返ってくる。
私が恭哉さんのお気に入りなのが気に食わないのか、何かとあるにつれてみんなには聞こえないように小言を言ってくる…。
遅れたら何を言われたものか分かったものじゃない。
ガラ!
扉を開ければまだ先生は来てなくて、ホッと少し息をついて自分の席までかけていく。
「おはよー!華鈴さん!体調大丈夫?」
「あ…、おはよ、蝶原さん。うん、もう平気…。」
席に付けば、前に座る蝶原さんがくるりと体をこちらに向けてニコニコと笑いかけてくれる。
それに私も少し笑って返し筆記用具などを取り出す。
「はいっ!珍しく休んだ華鈴さんの為に、珍しーーーーく!私がノート取っといたから、役に立つと嬉しいなぁ!」
「えっ!ほんと…?嬉しい、私なかなか皆についていけてないから心配だったの…」
あまり使った形跡がないノートは、とても見やすくまとめられていた。
授業中は基本寝てるばかりの蝶原さんだけど、実はとっても頭が良くて運動もそこそこできる。
ただ、人1倍面倒臭がりなだけで、そこさえ何とかなればーっていつも担任の先生に怒られてたっけなぁ。
ノートの端々に、「ここ、テストに出るらしい」や「この辺ややこしいから、先生に聞いたらいいかも」等のメモが施されていて、嬉しさから少し涙が滲んだ。
「あ、ありがとう…、私なんかのために…」
「いーのいーの!友達じゃない、私たち!」
「…!!!!う、うん…!」
友達。
その響きに、思わずビックリした。
まさか自分の事を友達だと思っていてくれていただなんて、考えたこともなかった。
ただ、席が前後で、優しい蝶原さんは一人でいる私を気遣って話しかけてくれているのだとばかり思っていたから。
だから…
「ち、ちょっと、華鈴さん?どしたの、大丈夫?」
「う、うん…、私、嬉しくて…」
思わず溢れてしまった思いと涙。
蝶原さんにはびっくりさせてしまったけど、涙を拭ってくれるその手の優しさが嬉しかった。
「ふふ、泣くほど喜んでもらえたなら、ノート取ったかいがあったってもんね!ほら、泣き止まないと授業始まるよ?」
「う、うん、ありがとう。」
ハンカチで涙をぬぐって、笑ってみせる。
今日は朝から理科のテストが返ってくる。
嫌味な先生に負けないようにしなきゃ。
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(女の子なら、仲良くしてもいいよね…?許されるよね…?)
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