第一章〜友情の足枷〜
11page 夕焼けに浮ぶ1番星
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
夕日も地平線の彼方に消えようかという頃、俺はひたすらバットを降っていた。
恐ろしいくらい真っ赤に染まる河川敷、さらさらと流れる川にこの思いも流せてしまったらどんなに楽だろうか...。
「…大丈夫だから、ほっといて欲しいの。」
俺だってお人好しで、無視され続ける相手に構ってたわけじゃない、そんな暇なわけでもない。
気になる相手だから…、好き、だと思えた相手だったから、もっと知りたくなったし、困ってんなら助けてやりたかっただけだった。
「…っ!やま、もとくんには、関係ないでしょう…!」
初めて、俺のことをまっすぐ見た華鈴の瞳は、完全に俺を拒絶していた。
苦しんでるはずなのに、辛いはずなのに、一人で抱え込もうとして…、そんな細くて小さい体で、抱え切れそうにないもんを抱え込んでる。
俺にはそう見えたんだ。
確かに、俺は華鈴のことなんも知らねぇし、華鈴がどんなことを抱えてんのかもわかんねぇ。
でもよ…、俺バカだからさ、野球しか知らねぇバカだから。
「…私は、私は、嫌いよ、山本くんのこと!」
何一つ、気を使ってやれることもなく、自分の欲求の為に華鈴を追い詰めちまった。
ブォンッ
勢いよく手からすり抜けて言ったバット、幸いあたりには俺以外に人はいなくて、遠くでカランカランとバットが落ちる音が響く。
「ハハッ…、情ねぇーの。」
バットを拾い上げ、肩に担いで空を仰げば、キラリと光る1番星。
「…遠いな、まるで華鈴みてぇだ。」
光り輝く1番星、すぐにほかの星に紛れてしまうけど、俺にとっては何よりも、誰よりも輝いている…。
「…また見たいだけだったんだ、夕焼けに照らされた1番星がよ、」
少し欲張っちまったな、その笑顔を間近で見てみたい、だなんて。
「っっし!!走り込みすっか!!!」
明日、ちゃんと謝ろう。
無視されたとしても、伝えたいんだ。
それが俺の、エゴだとしても。
11page 夕焼けに浮ぶ1番星
(俺の1番星、どうかいつまでも輝いていて)
prev- return -next