序章〜愛の首輪〜

9page 罰の痛み、罪の重み


「う…、」

ふと、寝返りを打とうとした時、全身にある傷の痛みで目が覚めた。
あれ…、私たしかシャワーを浴びて、それから…。

思い出そうとすると、まるで霧がかかっているように思い出せない。
でも、何だか懐かしく、優しい感じが…、



スラリ、



ぼんやりと天井を見つめていると、襖が開く音がした。
頭の中の霧がサッと消えて、一気に思考はフル回転する、

今、私は何処にいる?
シャワールームでは無い天井、柔らかいこの感覚は布団であると理解できる…、が。



「ようやくお目覚めかい?唯。」




まるで耳の奥に響くような感覚だった。

クリアで、そんなに大きな声ではないはずなのにキーンと響くようなその声は、私を一瞬で恐怖のドン底へと引きずり込む。

また、お仕置きされる…!!!
反射的に強く瞑った瞳。
けれど、いつまで経っても痛みは来なかった。

そっと、瞳を開いた時だった。




「フフッ…、怯えているのかい?唯…。」

「…っ!?」



ビクリッ

体が強ばる。
耳に届いたのはさっきとは違う、柔らかい恭哉さんの声…。




「シャワールームでお昼寝だなんて…、呑気だね?」

「あ…っ、」



怖いくらい優しい声で微笑みかける恭哉さん。
そっと、頬に添えられる少しひんやりとした手。
私は、今何が起こってるのか理解が追いつかなかった。




「僕は今、凄く機嫌がいいんだ。」




そう言うと、スルリと私の髪をすく恭哉さん。
前髪をかきあげられ、視界がクリアになる…。

本当に機嫌がいいのだろう、珍しく純粋に微笑む恭哉さんを見た…。

視界いっぱいに広がる恭哉さんの頬には、赤い血がついていた。




「ねぇ…、唯、答えて?」




クイッと、顎を掴んで上を向かされる。

頬についている血なんて、どうでも良くなるくらい、真っ直ぐに見つめられてしまえば、頬が一気に熱を持つ。

恥ずかしさのあまり、そらしたくなる視線。
けれど、ここで視線をそれらせば機嫌を損ねるに違いない…。

少しの沈黙、絡み合う私と恭哉さんの視線。

お互いの鼓動が聞こえるんじゃないかってくらいの沈黙を破ったのは、





「君が愛してるのは、誰?」





酷く優しく、そして、酷く怯えているような恭哉さんの囁きだった。

相変わらず私をただ見つめるその瞳は、黒く澱んでいた。
光を映さない、有無を言わせない、そんな瞳。
無邪気な笑顔を浮かべているはずなのに、冷めきったその瞳の奥…。

ああ、ああ、恭哉さん…、




「もちろん…、恭哉さんです。」




私が、私が悪いの。
貴方を独りにした私が…。

まだ痛む全身の傷も、貴方の心の傷に比べれば軽いものだから…。





「ふふふ、当たり前だよね、唯…。」





そんな、今にも泣きそうな顔をしないでください…。





伸ばそうとした手は絡め取られ、そのままベットへと沈む恭哉さん。






「君が思っていいのは、僕だけなんだから」







その後、恭哉さんは意地悪く微笑んで、私の傷口を抉るように舐めていった。

私は心が痛いのか、キズが痛いのかも分からず、涙が零れた。








9page 罪の痛み、罰の重み



(私が許されるその日は、きっとこない。)


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