序章〜愛の首輪〜

7page 夢での安息


サアアアアァァァァーー…



恭哉さんのお家にある小さな離れ、そこが私の生活スペース。

大きな屋敷にお住いの恭哉さんとは家で中々会うことがない。
だけど、見張られているのはわかる。
少しでも逃げる素振りを見せようものなら、私はまた"お仕置き"されてしまうのだ。

シャワールームにある大き目の鏡に映し出された私の体…、たくさんの傷跡。
いくつも重なり、痕になって、もう取れないだろう。

この傷跡は罪の証、罰の数だけ刻まれる…。
わかってる、私が悪いの…、だって、私が…




ズキンーーーッ




「いっつ…!!」



不意に頭痛に襲われ、その場にしゃがみ込む。
打ちつけるシャワーのお湯が、何故か体温を奪っていくのがわかる。

あれ、なんだかお湯が赤い…?

排水口に流れていくお湯は赤みを帯びていた。
ふと鼻の下を拭ってみれば、ねっとりとした血が手の甲にまとわりついた。




「あ…、鼻血…?」



大きな鏡に映し出された私の鼻から血がだらだらと流れている。
そんな自分をぼんやりと眺めていると、だんだんと意識が遠のいていく。

ああ、こんなところで倒れていたら怒られてしまう…。

シャワールームの天井を眺めながらそう思って、意識を手放した。

…最後に、恭哉さんの声が聞こえた気がした。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー






「あ、れ…?ここは?」



ふと目を覚ませばそこは綺麗な花畑だった。
近くには小川が流れ、小鳥がさえずり、心地よい風が頬をかすめる。
あたたかな陽だまりに包まれる、何だか現実味の無い…、そんな世界。



「ああ…、夢なのね。
 だって私はシャワールームに居たはずだもの。」



そう、夢というのが一番しっくりくる。
こんなのどかな風景も、こんなゆっくりした時間も。
…味わえるわけ、ないんだから。



「クフフ…、心地よいですか?
 …唯。」



ふと、耳元で声がした。
身体を強張らせた瞬間には、優しいぬくもりに包まれていた。




「久しいですね、私の唯…。
と言っても、つい先程会ったばかりでしたね。」

「えっ…?あ、あなたは、いったい…」




サラリと私の前髪を指先でなでるその人は
、右目に漢字で六と書かれていた。

この人は誰なんだろう…?

なぜ私を知っているの…?

なぜこんなに、懐かしいの…?



「もう暫くの辛抱です、唯…。
準備が整い次第迎えに行きますからね…。」




そう、その人は優しく囁くと私の瞳に手を被せ、視界を遮った。

そして私は心地よい眠りについたのだった…。


…あなたは、だれ?







7page 夢での安息


(ああ…、こんなに安心して眠れたのはいつぶりだろうか。)


prev- return -next



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -