序章〜愛の首輪〜

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下校時間。

あれから、私の体のあちこちに咬み痕をつけた恭哉さんは、唯一信頼を置いているのであろう草壁さんに私の帰路の警護を任せてどこかへ行ってしまった。

手当てはしたものの、じくじくと痛む身体中に泣きそうになる。
結局午後の授業には参加出来ず、私はまたみんなに遅れをとるのだろう。
山本くんを少し恨めしく思っては、少し前を歩く草壁さんに付いていく。

草壁さんは私を気遣ってか、時折様子を見るようにちらりとこちらに視線を向ける。
でもその瞳には、どこか軽蔑の色が混じっている気がする。

…きっと、私なんかが恭哉さんの機嫌を損ねたのが許せないのだろう。
…きっと、私なんかが恭哉さんからの愛を一時的に受けていることが許せないのだろう。
だって、だって私は、私は、

…あれ?なんだっけ?


思考は当たり前のように巡るのに、私は、のあとに続く思いはぼんやりと霧にかかったようだった。

自分の記憶なのに、と不思議に思い思わず立ち止まる。

私は、私は、なに…?








「…立ち止まるな華鈴、時間までに帰らねばまた罰を受けるのはお前だぞ。」

「あっ…、はい、すみません。」






ふと、疑問に思ったことは草壁さんの一言により掻き消えた。

とりあえず、明日こそ、平穏に1日を過ごせますように…。

そう願いながら曲がり角を曲がると、腹部に突然衝撃が走る。






「わーっ!!」

「きゃっ!?」






ドサリ!

思いもよらない衝撃に後ろへと倒れ込む。

思い何かが腹部に乗っていて、咬まれた箇所を押さえ付けた。






「い゛…っ!!!」

「ご、ごめんなさいお姉さん!大丈夫!?」







腹部に伸し掛る重みは幼い子供で、曲がり角でぶつかったのだとやっと理解した。

子供を心配させないように、ニコリと笑って見せて、ゆっくりとお腹の上からどいてもらった。







「ごめんね、私もちゃんと見てなかったから…」

「ほんとうにごめんなさい…!」

「みーくん!大丈夫!?すみません、うちの子が…」







その後、お母さんらしき人が現れた、何度か謝っては少年の手を引き帰っていった。


どこにでもいるような、愛らしい小さな少年。
けど去り際に少年は、少し意味ありげに微笑みながら、私に言葉を残したのだった。







「…やっと見つけた、私の唯。」





















「大丈夫でしたか?お怪我は……どうかされましたか、ボーッとして、傷が痛みますか?」

「あ、いえ、なんでも…。」






草壁さんの声により我にかえる。
けれど、さっきの少年の声が頭から離れない。

…あの子は、一体?








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(なんだか、どこかで見たことがあるような。)


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