序章〜愛の首輪〜

5page 罰則の証





強引に腕を引かれ、連れてこられたのは風紀委員室…。

豪勢な絨毯に、革張りのソファ、まるで校長室さながらのその部屋は、雲雀さんの風紀委員室。

…この学校の真の権力者、雲雀恭哉さんの部屋で。

握られた腕が痛い、強く握られているため、指先がどんどん冷たくなっていく。

部屋に入るなり、いきなり黙り込んでしまった恭哉さんが怖い…。

お仕置き、だろうか?

今度は、どうなってしまうのだろうか…?

恐怖から身体が震える。







「…さない、」







長い沈黙の末、ぽそりと呟く恭哉さん。

その瞬間、私の体は豪華なデスクに押し倒された。




ドンッ






「った…!」

「許さない…、山本武…、草食動物の分際で僕のものに手を出すなんて…。」






その目は瞳孔が開かれ、獰猛な獣のごとくゆらゆらと揺れていた。

恭弥さんは酷く山本くんを目の敵にしている。
それは男だから?私に積極的に話しかけてくるから?でもそれなら、なぜ私にこんなに酷いことをするの…?私はこんなに、関わるのを拒んでいるというのに…。

私の両手を片手で容易く押さえ込み、その瞳で私を捉える。
睨みつけるように上からしたまで私を眺めていたかと思えば、その長く美しい指で頬、首筋、乳房、脇腹と、ゆっくりとなぞられる。

以前付けられた痕を辿るように優しくなぞられれば、その擽ったさに身じろぐ。





「きょ、うやさ…、くすぐった、」









耐えきれず、声を出した時だった。
その瞳は瞬時に怒りを宿して私を睨みつける。







「うるさいなぁ…、咬み殺すよ?」






その手が太ももまで伸びた時、つい言葉を出してしまい、その美しい指の爪がギリリと肉に食いこむ。







「いっ…た、!」

「ふふ…、痛い?唯…、痛いのかい…?」




痛がる私に気分を良くした恭弥さんは、まるで子供がおもちゃで遊ぶ時のように純粋な笑顔を浮かべる。

その瞬間、私は"ヤバイ"と思った。





ガリッ






その瞬間、首筋にその鋭い歯を立てる恭哉さん。

ああ…、始まった。







「っあぐ、いだ、い…っ!!」

「ふふふ…、苦痛に歪む唯の顔はこの世で一番綺麗だよ…、もっと良く見せて?」






うっとりと、本当に私が痛がる表情が好きなのだろう恭弥さんは優しくそう言って、優しく伊達メガネを外す。

視界がクリアになり、はっきりと見える恭哉さんの顔…。







「あ…、」







そこに映るのは、心の隙間を埋めようと必死な恭哉さんの悲しい瞳。

…それはきっと、私の罪の証。






「…恭哉さ、」






その頬に、触れようとした時だった。



バシン!





頬を思い切り打たれた。






「何をしているの?僕に触れていいのは唯だけなんだよ…」








ああ、恭哉さんは、今日も私を"見てくれない"。

私の名前を呼んで、私に触れて、私に痕を残していくはずなのに、恭弥さんは私とのあいだに別の誰かを見ているよう。

今日も私が、恭弥さんに触れることは許されない。








「…ごめんなさい、恭哉さん。」







謝罪の言葉を述べるのが先か、恭弥さんが噛み付くのが先か、それすらも分からないくらい、私はたくさんお仕置きされる。

それは、ルールを破った私への罰則。

私の、罪。










5page 罰則の証




(身体中に刻まれるあなたの痕、私の罪の証。)


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