序章〜愛の首輪〜
3page 歪んだ愛情
バキッ
持っていたシャープペンシルが鈍い音を立てて二つに折れ曲がる。
視界に映るのは、愛しい愛しい僕の飼い猫と、それに群れる草食動物。
あの馴れ馴れしい女が近づくだけでも腹立たしいのに…、ここ最近、山本武とか言う野球部の男が僕のものに近づいている。
この風紀委員室からよく見える窓際の席に座らせたのは僕だ、ここからならいつでも監視できるからね。
流石に、何を話しているかまでは分からないけれども…、まあもし仮にあの山本武とか言う草食動物と会話していようものなら今すぐにでも呼び出して"お仕置き"してあげなきゃいけないけどね。
「…唯、」
その名前を口にするだけで、ぞくりと僕の心をかき乱す。
君が誰かに触れられようものなら僕がそいつを咬み殺してやる…、僕の、僕だけの唯…。
叶うなら、この風紀委員室に…いや、僕の部屋にずっと閉じ込めておきたいのに、義務教育とは何とも煩わしい制度だろうか。
「ああ、ああ…、唯…!」
この僕をここまで熱くさせるのはきっとこれから先も後も君しかいない、君が悪いんだ…、唯があまりにも可愛いから…。
それにしても、あの草食動物はどうしてやろうか…?
ふつふつと湧き上がる嫉妬と独占欲と殺意を制御しようともしないまま、トンファーを持ちふらりと風紀委員室を後にした。
ああ、唯…、ただ君を愛しているだけなのに。
君はまた、怯えた顔で僕を見るんだろう…?
でもそれが、恐怖でもいい、君の心を僕でいっぱいに出来るなら、それで…。
にたり、
きっと今、僕は狂気に満ちた笑みを浮かべているのだろう…。
ああ、唯、愛してるだけなんだ。
3page 歪んだ愛情
(他の誰にも取られないように、僕の手の中に…)
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