黒猫さんの物語。 | ナノ


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右手の、約束。

ユイは俺の「必ず」と言う言葉に、右手を高々と掲げた。

…それは、ユイが俺たちの事を忘れていないと言う決定的な証拠。



「…一緒に、海へ。」



あの時の約束を思い出す。

あの頃の俺たちは、まだ幼く無力だった…。

それ故に、海という果てしなく続く世界に魅せられ、焦がれた…。





「いつか絶対、俺たちで海に出よう!」





ローの言葉が、今でも鮮明に蘇る。





「必ず、ミンナで!」





俺たちは右手に誓い、約束した。



「…ユイは約束を守る。
 今は…」



カサリ、


ユイがこの女を俺に預けるときに渡されたメモを見る。

そこにはルーシェと言う奴に俺たちの荷物を預けていることと、必ず追いつくという文字が。



「…信じているからな、ユイ。」



大丈夫、ユイは必ず来る。

俺は自分にそう言い聞かせ、船内へと入っていった。

…この胸騒ぎに、気づかないフリをして。




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