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「ユイさーん、全員言われた通りに"あの部屋"にぶちこんできましたー!」
「ありがとう、アリーシャ。
貴女も傷の手当てして貰ってきなさい。」
ローたちを捕まえ、全員私の"隠れ家"にぶちこんだ。
アイツらの船はもうじき"落ちる"だろうからそっちも手配しなくちゃならない。
…海軍の私がこんなことしてんのがバレたら、クビどころじゃ無いだろうな。
チラリとアリーシャを見れば身体中にかすり傷やアザができている。
いつもと違う戦い方をさせてしまったからだろう、顔には疲労の色が浮かんでいる。
アリーシャの今後についても考えなくてはいけない、彼女をこれ以上巻き込むわけにはいかないだろう。
「…アリーシャ、聞いてた?」
先ほどからソファに座りこちらを見ているアリーシャに、呆れたような視線を送ってやる。
…アリーシャは、勘の鋭い子だ。
隠していることを然り気無く付いてくる。
「いや、怪我の手当てならいいっス。
これぐらいどーってこと無いですし。」
ケロリとした表情で答えるアリーシャに、何だか力が抜けた。
…どうやら深読みしすぎたらしい。
そう、と短く返事を返して私はまた手元の書類を纏めにかかる。
「…ただ、ひとついいっスか?」
ピクリ、
もう一度アリーシャに視線を向ければ、そこには全てを見抜こうとする鋭い瞳があった。
「何?言ってごらんなさい。」
書類に視線を落とし、アリーシャの言葉を待つ。
至って冷静に、動じてはいけない。
パラリと、乾いた音が響いた時
「…アンタとトラファルガー・ローって、昔会ったことあるンスか?」
ドクリ───
心臓が一瞬強く響いた。
だが、私は一つ息を吐きだしアリーシャに向き直る。
「…さあ、知らないわ。」
書類の束を片手にアリーシャの横をすり抜ける。
私は部屋にアリーシャを残し後にした。
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