黒猫さんの物語。 | ナノ


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「キャプテン…、この島やけに海軍が多いっスよ…」



双眼鏡を手に、シャチは嫌そうに顔を歪めた。

シャチから双眼鏡を奪い取り、町の方を見てみれば胸くそ悪ぃマークがゴロゴロ彷徨いてやがる。



「…目立った行動は起こさねぇ方がいいな。」

「なら、俺たちだけ食料を調達してこよう。」



深くため息をついたとき、何時ものツナギでは無く私服に着替えたペンギン達が名乗りをあげた。

コイツは冷静で頭もキレる、海軍と出会しても何とか切り抜けてくるだろう。



「悪いなペンギン、任せた。」

「お安いご用だキャプテン。」



ニッと好青年な笑みを浮かべ、船を降りていくペンギン達。

…ペンギン、いくら私服に着替えたとはいえそのペンギン帽子を被ったままじゃあ意味がねぇんじゃねえか?と言いたくなったがあえて言わないでおいた。



「あー…、暇っスねぇ…」

「暇ならデッキにモップかけとけ。」

「へいへーい。」



バンダナを巻いたイルカがダレるように俺の横に並ぶもんだから睨みを効かせてやった。

それでもあまり堪えていないようだったから海に突き落としてやった、フッ。



「酷いっスよキャプテぇン!」

「うるせぇ、この船でのルールは俺だ。」



まだギャーギャー喚くイルカを放置して、俺はデッキに出してあったウッドチェアに腰かける。

横に置いてあったテーブルに帽子を起き、暇潰しに古びた本をパラパラと捲った。



「あれ、キャプテンまたソレ読んでるの〜?」

「何だベポ、昼寝してたんじゃねぇのか?」

「ん〜、目が覚めちゃった〜!」



寝起き特有のゆったりとした口調で、白熊のベポは俺にふにゃりと笑いかける。

その愛らしい姿に此方も自然と笑みが零れ、モコモコとした毛並みを撫でてやる。



「ソレ、ユイがキャプテンにくれた本だよね〜?」

「…ああ、そうだ。」



ユイ、…俺の幼馴染みで、俺が唯一心を許した女…。

アイツはいつも小難しい本を読んでた、伝説だとか、考古学だとか、航海術の本も、とにかく色んな本を読んでた。

俺は親の影響もあって医学書ばっか読んでた、外科から内科まで色んな本を読み漁ってた。

ユイが医学書はあまり読まないと知ってからは、もっと沢山の医学書を読むようになった。

いつも色んな事を教えてくれるユイに、俺が教えてやれるのは医学の事だけだったから…。

…あの頃は、少しでもユイに近づきたかった。

ただでさえ一つ歳が離れているのに、これ以上離れたくなかった。



「…ユイ、いまどこにいるのかなぁ?」

「さあな…。けどアイツの事だ、この海のどっかに必ず居るさ。」

「うん、…そうだよね!」



ころころと表情を変えるベポの頭を撫で、俺は空を見上げる。

…ユイ、ぜってぇお前を見つけ出してやる。

…それまで、待っててくれよな。



「キャプテン!海軍が!」

「チッ…、もう見つかったのか…」

「おっ、腕が鳴るねぇ…」

「シャチ、イルカ、気ぃ抜くなよ…、テメェ等も気合い入れてけ!」

「アイアイ!キャプテン!」



一人の女を筆頭に、海軍供がワラワラと沸いて出てきやがる。

上等だ…。



「…あれ?ユイ?」



ドクリ───


ベポの言葉に胸騒ぎがした。

…海軍を率いてる女、それは、



「…ユイ、」



ああ、神とやらが居るなら聞きてぇな、何でだよ…



「…悲しいなぁ、ユイ?」



何でだ、何でだよ、ユイ…

何で俺に、銃を向けてんだ…?



「…ハートの一味、貴方達の航海はここまでよ。」

「…聞けねぇな。」



なあ、ユイ…





別れた道は程遠い。








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