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「ロー、仲間割れしてる暇なんて無いぞ。」
「どういう事だペンギン…、そのじゃじゃ馬娘は何だ。」
ビリビリと、肌に突き刺さるような殺気を容赦なく浴びせてくるロー。
…いや、この感じは、自分がぶちギレているのに気づいてないな。
「訳は操縦室で話す、着いてきてくれ。」
「待てペンギン、俺に指図すんな。
今すぐ、ここで言え。」
…刀を持ってない癖に、何て威圧感だ。
生憎、俺は今ローの言うところのじゃじゃ馬娘のお陰で両手が塞がっている。
今の俺じゃ、まともにローと戦えやしないだろう…。
「…ユイから言伝てを預かっている。」
「何…?」
ピクリと、ローの片眉が跳ねる。
…今も昔も、コイツの頭ん中はユイでいっぱいだな。
呆れてため息を吐きたくなるがぐっと飲み込み、俺は次の言葉を紡いだ。
「とにかく、今は一秒でも時間が惜しい。
操縦室まで来てくれないか、ロー。」
「…ああ、分かった。」
素直に頷くローを見て、一先ず安心する。
コイツは昔からそうだ、熱くなると冷静に回りを見ようとしやがらねぇ。
ユイは上手く押さえ込んだもんだが…、
「(…俺も、まだまだだな。)」
別にユイを目標としている訳じゃない。
…ただ、追い付きたくて。
「ユイっ!?」
「ペンギン…っ!」…ユイの背中を追いかけるだけなんて、
「…ローとベポを、よろしくね?」…もう、ごめんだ。
脳裏を過るユイの顔をかきけして、俺は操縦室へと足を進める。
「…シャチ、イルカ。
お前たちも来い。」
「っス。」
「へ?お、俺も?」
ローの殺気に当てられていた二人だが、やはりと言ったところか。
他のクルーはまだ固まっている奴が多いが、この二人はもう多少なりとも緊張が解れている。「ああ。
お前たちには聞く権利と、…そしてイルカ、お前には聞く義務がある。」
「…はい。」
苦笑いを浮かべながらローの顔色を伺うイルカと、困惑した表情のシャチ、そしてぽけらんとしているベポを連れ、俺たちは操縦室へと入っていった。
…なあユイ、俺はお前に追いつけているか?
それぞれの思い。(思いは違えど、願いは一つ。)
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