黒猫さんの物語。 | ナノ


  4/4


 


「ロー、仲間割れしてる暇なんて無いぞ。」

「どういう事だペンギン…、そのじゃじゃ馬娘は何だ。」



ビリビリと、肌に突き刺さるような殺気を容赦なく浴びせてくるロー。

…いや、この感じは、自分がぶちギレているのに気づいてないな。



「訳は操縦室で話す、着いてきてくれ。」

「待てペンギン、俺に指図すんな。
 今すぐ、ここで言え。」



…刀を持ってない癖に、何て威圧感だ。

生憎、俺は今ローの言うところのじゃじゃ馬娘のお陰で両手が塞がっている。

今の俺じゃ、まともにローと戦えやしないだろう…。



「…ユイから言伝てを預かっている。」

「何…?」



ピクリと、ローの片眉が跳ねる。

…今も昔も、コイツの頭ん中はユイでいっぱいだな。

呆れてため息を吐きたくなるがぐっと飲み込み、俺は次の言葉を紡いだ。



「とにかく、今は一秒でも時間が惜しい。
 操縦室まで来てくれないか、ロー。」

「…ああ、分かった。」



素直に頷くローを見て、一先ず安心する。

コイツは昔からそうだ、熱くなると冷静に回りを見ようとしやがらねぇ。

ユイは上手く押さえ込んだもんだが…、



「(…俺も、まだまだだな。)」



別にユイを目標としている訳じゃない。

…ただ、追い付きたくて。




「ユイっ!?」

「ペンギン…っ!」






…ユイの背中を追いかけるだけなんて、





「…ローとベポを、よろしくね?」





…もう、ごめんだ。


脳裏を過るユイの顔をかきけして、俺は操縦室へと足を進める。



「…シャチ、イルカ。
 お前たちも来い。」

「っス。」

「へ?お、俺も?」



ローの殺気に当てられていた二人だが、やはりと言ったところか。

他のクルーはまだ固まっている奴が多いが、この二人はもう多少なりとも緊張が解れている。「ああ。
 お前たちには聞く権利と、…そしてイルカ、お前には聞く義務がある。」

「…はい。」



苦笑いを浮かべながらローの顔色を伺うイルカと、困惑した表情のシャチ、そしてぽけらんとしているベポを連れ、俺たちは操縦室へと入っていった。



…なあユイ、俺はお前に追いつけているか?





それぞれの思い。



(思いは違えど、願いは一つ。)




prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -