黒猫さんの物語。 | ナノ


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「ベポ!?お前こんなとこにいたのかよ!?」



イルカの驚いた声にその場の全員が振り向いた。

まだ麻酔が完全に抜けきっていないシャチと、何故かこの場に居ないペンギンを除いて。



「あ!キャプテン!ミンナ〜!」



両手に大量の果物を抱え頬張るベポ。

…牢屋に居ないと思ったら、船にいたのか。



「無事だったか、ベポ…。」

「アイアイ!キャプテン!
 あのねキャプテン、ユイから伝言ー!」



ピクリ、


リンゴをかじりながら、ベポは嬉しそうに言った。



「"ごめんね"だって!
 キャプテン、ユイはオレたちのこと忘れてなんかなかったよ!」

「ユイが…?」



呆然としていた。

この目で見ていた訳じゃない、この耳で聞いていた訳じゃない。

だがベポは嘘をつけねぇ質だ。

…ならユイ、お前は何故?

ぐるぐると考えが頭の中を巡る。

アイツは今海軍だ、だがそれも強制的にやらされているに違いない。

なら俺たちと一緒に来ればいい、何故こんな…?

そんな中、やっと麻酔が抜けたのか、シャチが「そういや」と口にした。



「そういや、あの海軍のちっせぇ女が言ってたんだけど…。」

「何だシャチ、言ってみろ。」



そういやコイツ、あのじゃじゃ馬娘とやりあったんだっけか。

…なら何故、コイツは麻酔かけられてたんだ?

あのじゃじゃ馬娘とやりあったのはイルカも同じだ、だがイルカは牢屋にぶちこまれた時にはもう意識を取り戻してた。

なら、何故…?



「"テメーの目は節穴ですかァ?
 ユイさんはちゃんと急所外してるし、何より実弾なんかこれっぽっちも使っちゃイネェよ。"…って。
 現にキャプテンもペンギンも撃たれてんのに生きてます、し…?」



そうだ。

俺は今、"生きている"。

それどころか、俺の仲間は誰一人として死んじゃいねぇ。

…何で、そんな事に気づかなかった?

何で、俺は…



「…そりゃ、殺せるはずないっしょ。」



ポツリ、イルカが呟いた。



「どういうことだ、イルカ…。」



思わず声に力が入る。

イルカは俺の殺気を感じとり、一瞬目を見開き怯えたような表情を見せた。

だが、んなこと構ってらんねぇ。

コイツは、俺の知らねぇ"何か"を知っている。


胸糞悪ぃ…、どいつもコイツも俺よりユイに近い場所に居やがる。



「答えろイルカ。」

「…じ、つは、」



イルカが口を開いたときだった。



「何してんだ、ロー。」



ペンギンが、じゃじゃ馬娘を抱えて現れた。




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