重たい空気が漂う中。 唯の背中に重たい何かがのし掛かった。 「なぁにしてんのサ、唯!」 「ぐぇぇっ!?」 「沖田さん!?」 「「総司!?」」 沖田総司と呼ばれた男は、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべ唯にのし掛かる。 千鶴が慌てて止めようとした、が… 「やめてやれ総司。 いくら久しぶりに会ったとはいえ、それはないだろう。」 スルリと千鶴の前に滑り込んだ一は、総司を呆れたように見つめ、宥めた。 「はいはい、一くんは相変わらず真面目だね。」 降参とでも言うように両手を上げ唯を解放した総司、同時に唯が激しく咳き込みはじめた。 総司は唯に抱きつくフリをして首を閉めていたようだ。 「し、死ぬかと思った… おいこら総司っ!」 ピタリ、 一と総司と唯を除いた者たちが固まる。 それもそのはず、唯は千鶴たちが言う所の昔の記憶が無いのだ。 ならば、沖田総司のことだけを何故名前で呼ぶのか? それだけではない、何故一は落ち着いて対処出来ているのだろうか?と、疑問が渦巻いているだろう。 「おい総司、どういうことだそりゃぁ…」 「あれ?言ってませんでしたっけ? ねえ、一くんは?」 「そういう話をした覚えは無いな…、すみません、土方先生。」 「唯ちゃん、沖田さんたちの事は覚えて…?」 土方、総司、一が話をややこしくする前にと千鶴は唯に直接聞きに入った。 これも長年の付き合いの中で見つけ出した生きる術であろう。 唯はキョトンとした面持ちでケロリと答えた。 「え?私と総司は幼馴染みだけど…?」 「…へ?」 千鶴はポカンと口を開けた。 [prev|next] |