「わぁっ!
 見てみて唯ちゃん!
 桜がいっぱい!」

「へぇぇ…、さすが薄桜学園っていうだけあるなぁ…。」

「なあなあ、早くしねぇと式始まっちまうぜ!」



私立薄桜学園高等部。

それが、今日から彼女達の通う学校である。

それぞれの個性を生かす事と自由がモットーで、とても人気のある学校だ。



「平助、入学おめでとう。」

「一くん!」



校門前、黒髪の青年が平助に声をかけた。

どうやら千鶴も知り合いらしく、二人はその青年の元へとかけていった。

唯は少し離れた所で二人を見る事にし、校門の柵にもたれかかった。





──────────





「…千鶴に気安く近づくなよなぁ。」



唯は唇を尖らせながら三人の姿を見守っていた。

どうやら自分の知らない所で仲良くなった男と千鶴が仲良くしているのが気に入らないようだ。



「ちぇー…、あんな楽しそうな千鶴見てたら邪魔できないじゃんかよぅ…。」



ブツブツと文句を垂れながらも、千鶴の幸せそうな時間を壊すのは嫌らしい。



「あーあ、退屈だっ!」



コツンッ


唯は足元の小石を蹴り飛ばし暇をもて余していた。

すると、蹴り飛ばした小石の1つが思いの外遠くへ飛び、そちらの方へ唯が目をやった、その先に…



「唯…、」



黒い髪に、深い紫の瞳を持った男の人が、桜吹雪を背に、唯の瞳に映る。



「…唯、おまえ、」



その男は驚いたような、けれどどこか懐かしむような、そんな声色で唯に近づく。

しかし…、



「…えっと、どちら様ですか?



こてり、不思議そうに首をかしげる唯。

唯の瞳には悲しげに揺れる瞳が映った…。






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