「…へえ、君が千鶴ちゃんの幼馴染みねぇ?」

「…な、なんだよ?」



ジロジロと品定めするように平助を隅々まで見る唯。

暫くすると千鶴の元へ行き、千鶴の肩に手を置いて言った。



「やっぱり千鶴は私が幸せにするからさ、あんなチマイの止めとけってば。」

「だから唯ちゃん、私と平助君はそんなんじゃ無いってば…」

「チマイって何だよチマイってえぇ!?」



ガルルッと今にも食いかかって来そうな平助を横目で見ながら唯は鼻で笑った。



「小さいんだからさ、仕方なくなぁい?
 オチビさん?」

『小せえんだから、仕方なくねぇ?
 オチビちゃん?』




ドクンッ


――今、昔の唯と現の唯がダブって見えた。


平助はギリリと奥歯を噛みしめ、拳を握りしめた。



「っ、んでだよ…?」



バッ!


平助は唯に掴みかかる、しかし瞳には涙が浮かび、悲しみが宿っていた。



「んでだよ!?
 何で忘れちまったんだよ、唯…っっ!?
 俺たちっ、仲間だったじゃねぇか…っっ!」

「…………っ」



唯は一瞬顔をしかめた。

しかしそれは一瞬で、小さくため息をつくと同時に平助に口付けていた…。



「…………っっ!?」

「…ゴメン、泣かれたりしたらさ、どうすれば良いか解んないんだ。」



サラリ、平助の髪を軽く撫で、哀しそうに瞳を揺らす唯。



「…こんな方法しか、僕は知らないから。」



ドクンッ


哀しげに笑う唯に、平助の記憶がフラッシュバックする。

そう、アレは、"試衛館"に居たときの事…。



『泣くなよ、僕に勝てないくらいで情けないなぁ。』

『だあぁ、もうっっ!
 メソメソしてんじゃねぇよ!』

『ゴメン、泣いた奴を黙らせるなんて、こんな方法しか知らねぇんだ…』




「…………っっ、なら、覚えとけよ、っばか、やろう…っっ!」

「っはは、ゴメンってば!」



――ワシャワシャと俺の頭を撫でんのは、間違いなくあん時の唯だ。



「…平助。」

「…ん?」

「俺の事、平助って呼べよな、変なあだ名つけたりすんなよ!」



唯を指差し軽く睨み付けながら言う平助。

唯は楽しそうに笑うと、意地悪そうに口許を歪めた。



「それは私の気分次第かなぁ?へーちゃん?」

「っだあぁ!ちゃん付けヤメロってばぁぁ!」

「あ、まって、唯ちゃん、平助君っ!」



逃げる唯を平助が追いかける、そんな二人を追いかける千鶴…。

唯には何故か、懐かしく思わせる光景だった。



「ほら、急がないと入学式間に合わないよ、平助、千鶴ちゃん!」



ブワァッ


桜吹雪の中に立つ唯を見て、二人は唯に昔の面影を見出だしたのだった。

そう、これは始まりなんだ…。








桜散る、春の空。







(…僕さ、桜好きだよ。)(…知ってるよ、そんなこと。)(…うん、ミンナ、知ってるよ。)



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