第3話〜それは天使か?それとも〜

ザザーン…、ザザーン…



それは穏やかな一日だった。
波も穏やかで心地よい風の吹く夏島。
だが島の全てが崖になっており、上陸するには人数が限られている。

1番隊からは隊長であり飛行能力もある俺が食料調達に駆り出されているが、この森はどこか不思議だ。
とても穏やかな森なのに、穏やかすぎる。
こんな安全すぎる場所がグランドラインにあるだなんて…、信じられねぇ。











「…民家どころか、動物すらいないなんて、どうなってんだよぃ。」











そう、あまりにも静かすぎた。
気配をひとつも感じられない。
歩き続けても、空を飛んでも、実が成っているような木も見つからない。

…これは厄介な無人島に寄ってしまったようだ。












「まあ…、1時間でログが貯まるってのが不幸中の幸いだな。」











次の島までなら何とか食料も持つだろうと計算しながら、船へと戻ろうとした時だった。










「…ん?人か?」









崖っぷちにたたずむ、グランドラインを旅するには似つかわしくない軽装の子供。
もしかしたらこの島の人間かもしれない、なにか話を聞けたら…。

そう思い、声をかけようとした時だった。




ガラッッ




その子供の足元が崩れ落ち、そのまま子供も呆気なく落ちていく。
それは反射的な行動だった、すぐ様フェニックスへと姿を変え子供を追った。












「何してんだよィ!死にてぇのか!」












足で服をつかみ、海に打ち付けられる間一髪のところで子供を拾い上げた。
鳥の姿のままだったが、思わず声を荒らげて子供へ怒鳴りつけた。

子供は何があったか分かっていないのだろう、手足をばたつかせるが、俺の声を聞いて身体を縮こまらせた。

すぐ近くに船があったため、一度崖の上へ引き返すよりは…と思い、船へと運んでやる。

その体は予想以上に細く、軽く、普通の子供よりも小さく感じた。
身につけている服も、よく見れば見慣れない物ばかりだし、こんな無人島で生活する人間がどうやって手に入れたのかと疑問ばかりが浮上する。











「一体何者だぃ?あんな崖っぷちに突っ立って…、死ぬつもりだったのかよぃ?」

「お?どーしたマルコ!誰だそいつ?」












甲板に着地したからか、気づいた仲間たちがゾロゾロと俺と子供を取り囲む。
フェニックス化を解き、人の姿に戻って再度子供に目をやる。

…震えている?
帽子とマスクで表情が一切わからないが、顔を覗き込んでみた。










「…っっ!!」










思わず、息を飲んだ。
深く被られた帽子と顔を覆うマスクの隙間から見えた、その瞳。

自分の顔が視界に入った途端、言葉には表しようがない恐怖、憎悪、拒絶、憤怒…、あらゆる負の感情が自分に向けられているのが分かる。
じっとりと、背中に嫌な汗が流れるのがわかる。

だがそらせない。
その負の視線からそらすことが出来ない。

それは、その澄み切ったブルーの瞳に見いられているからだろう…。











「…安心しろぃ、俺たちは何もお前を取って食ったりはしねぇよぃ。」











取り敢えず、安心させてやるために頭を撫でようとした、その時だった。











「……な、触るなああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!!」












ズンッ


体全体…いや、船ごと押さえつけられたかのように、突然の重力に呆気なく床に伏した。

目の前の子供が、拒絶の言葉を叫んだ、ただそれだけだと言うのに。

何だ、この力は?何だ、この威圧感は?

覇気のそれとは違う…なら悪魔の実の能力者か?












「ぐっ…!おち、つけ!!!誰もお前を、傷つけたり、しねぇよぃ!!!」
「いやっ、いやっ、いやああああああああぁぁぁ!ああああああああぁぁぁ!!!お母さんっっ!!お母さああああああああぁぁぁん!!!!」









子供は頭を振り乱し、叫び続ける。
叫びをあげるたびに、ミシミシと身体が軋んでいくのがわかる。
横になんとか顔を向ければ他の乗組員も床に伏せて呻き声をあげていた。

なんて事だ…、こんな子供助けるんじゃなかったよぃ…、こんな所で、こんなわけも分からない島で俺たちは全滅するって言うのかよぃ…!!!












「キミ、おイタが過ぎるわよ…、ちょっと眠っててね。」











チクリ、

音もなく背後に回り込んでいたナース長、カミューが子供にそっと麻酔を打つ。
するとさっきまであんなに叫んでいた子供はクタリと身体の力を抜きカミューの方へと倒れ込んだ…。

その瞬間、自分たちへの謎の力は消えさった。
しかし身体はひどく痛めつけられたようであちこちがミシミシと音を立てる。











「っもー!マルコ隊長、なんて子を拾って来たんです!!」
「いや、それよりもカミュー、お前なんで動けるんだよィ…」
「え?さぁ…、ナースは全員ピンピンしておりますわ。」









どうやら謎の力に押さえつけられていたのは男だけのようで、他のナース達も他の隊員をせっせと手当していた。












「…本当に、とんでもねぇもんを拾ってきちまったようだよィ。」














自分たちをこんなに痛めつけたやつの顔を拝んでやろうと、子供のマスクを外せば、整いすぎたまるで人形のように美しい顔立ちが現れた。












「あらっ!寝顔はすっごく可愛らしいのにー…」
「…寝てたら、な。」














……To be continued

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