第2話〜真っ逆さま〜
チュンチュン…、チュン…
まだ涼しい風の吹く朝。
森の中だとよりいっそう涼しく感じた。
パーカーを着てきたのは正解だったかもしれないなと考えながら、ゆっくりゆっくり奥へと進んでいく。
自分の通う学校は、世界から隔離されたような山奥にたたずむ、"ワケあり"が通う女子校だ。
世間でいう"一般的"な生活から外れた者達が通うその学校は、一番近くの街へ行くのにさえ車で一時間はかかる。
本当に、世界から隔離されたような学校。
けれどそれに不満を持つものは誰一人としていない。
自分も、そんな人間のうちのひとりだ。
ただ唯一の不満といえば、出来ることが少ないことだろうか。
家がとても遠く離れているからわざわざ帰ろうとも思わないが、あと1ヶ月も夏休みはあるというのに本当に何も無いのだから。
図書室くらい解放していてほしいものだ。
くだらないことを考えながら、どれほど進んだだろうか?
太陽はもうすっかり上まで来ている。
広がる景色は相変わらず木々が生い茂っているだけだった。
野生の動物の1匹くらい見れるかと思っていたら、小鳥の声すらもしなくなっていた。
不気味なくらい静かな森。
風が木の葉を揺らす音しか聞こえない…。
お腹もすいてきたし、そろそろ引き返すか。
退屈しのぎと、いい運動になったと考えればいいかと思い、来た道を戻ろうとした時だった。
「…っ!?」
くるり、踵を返した先は崖だった。
いや、そんなはずはない、さっきまでずっと森が続いていて、ただひたすら森の中を歩いていただけだ。
こんな、抉られたような崖なんて見当たりすらしなかった…、いや、それだけじゃない。
自分はたしかに、ずっとずっと、森の中を歩いていた、ありえない。
ザザンー…、ザザーン…
崖の下では大きな音をたてて波がぶつかっている、真夏の太陽でキラキラと反射している水面。
視界一面に広がる、青。
それは、確かに海だった。
くらり、目眩がした。
それは歩き続けていたことへの疲労から?
それとも真夏の太陽にあてられたから?
いや、違う。
この目の前の、非現実さにだ。
ガラッッ!
その瞬間、足元の土が、まるで漫画のように、アニメのように、崩れる。
ああ、落ち、る。
これは、夢なのかな?
……To be continued
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