第1話〜いつもの朝〜


それはそう、いつもの事だった。
こんがりとしたトーストに、こうばしいコーヒーの香り。

サックリ、ひと口噛めば広がるマーガリンのしょっぱいバターの風味。
あつあつのコーヒーにお砂糖を1杯、たっぷりのミルクで飲みやすいくらいにぬるめてはひと口ふた口すする。

テレビをつければ今朝もニュースキャスターが我が国のあれこれを教えてくれる。

そんな、いつも通りの朝だった。

ぼんやりとテレビ画面を眺めては、またサクサクリとトーストを食べすすめる。


今日は何して過ごそう。
まだまだ一日は始まったばかり、もう少し寝ていても良かったのに毎日の習慣とはなんと恐ろしいものか…。
見渡せば、必要最低限の家具が揃った殺風景な私の部屋。
娯楽的なものは何一つなく、教科書や参考書だけが本棚にズラリと並んでいた。

宿題は、もう終わらせてしまっているし、特に予習しておくこともない。

夏休みで、みんな実家に帰ってしまっているし、寮にいるのはきっと私くらいだろう。

自然に囲まれた山奥の学校の周りなんて森しかない、本当にすることが無い。

…けれど、それなら。
その森に探検へ出かけるのもいいかもしれない。

やっと見つけた退屈しのぎに、残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
ささっと食器を洗ってしまえば、出かける準備を始める。

目深に帽子をかぶり、マスクをつけ、愛用の学校指定パーカーを羽織る。
髪は全部帽子の中にまとめて入れて、スウェットのままスニーカーをはいた。



ちょっとした、散歩のつもりだった。



たまには外にも出なきゃなっていう、そんな軽い気持ちで。




誰もいないし、心配なんてない。



















そう、思ってた。











……To be continued

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