咆哮



・トーマのデレがデフォ(←今更)





(嗚呼。君は、泣いていた。)

拳を握りしめ、唇を噛みしめ、瞼を力一杯閉じて、彼のまだ若い体は震えていた。



荒ぶれる計数で出来た地は酷い傷痕だらけだった。それは倉田博士による理不尽な被害を被った証。そして傷付いたのはそこで暮らすデジモン達も然り。出来る限りギズモンを倒しなるべく犠牲を少なくと努めていた。

「っ‥ぐっ!」

「アニキィ‥ごめんよお。あの時隠れていたギズモンにもっと早く気付けてたら‥」

「んな顔すんなって。こんぐらいかすり傷かすり傷!‥ってて‥」

「‥ガオモン、アグモン。ヨシノさんとララモンと一緒に見張りを頼む。」

「イエス、マスター」

「アニキィ‥」

「大丈夫だって、な?」

しぶしぶマサルの側を離れたアグモンは一回足を止めちらりと振り返った後、やっと敵に備える為の見張りに付く。マサルを中心に取り囲む様に、大きな円で囲む様に。彼は、酷い怪我をしていた。不意打ちに合い左側の拳は今は使い物にならなかった。

「一旦、戻ろう」

その案にマサルは強い拒否をした。大丈夫だから。無茶はしない。ギズモンを倒さないと。

いつもは強く揺らぐことのない翠の双眼が、少し、怒りに揺れていた。‥恐らくそれは自分自身への怒り。トーマは分かったと、息を吐いた。



夜。静まり返った世界に独り。
泣いている彼を見た。膝が崩れそうで、掌を地につきそうで。やっと立っているだけだろう彼。涙は流れていない。きっとそれでは何一つ洗い流せない事を知っているから。

でもね、マサル。僕が聞いてあげるよ。君の胸が裂ける程の咆哮を。それで君が何度でも立ち上がれるのなら。痛みを伴うなら何時でも叫べばいい。僕が支えてあげよう。また君が、輝けるようになるのなら。

本当はマサルだって理解している。
我が儘で意地を貫いたって、足手纏いにしかならない事実を。だけど僕はその意地を確固とし、守り抜いてほしい。

だって、それが「君」だ。
それでこそ「君」だ。

僕が傍に居よう。
居てあげる。
ありとあらゆるその想い、全てを呑み込み、奈落の底まで堕ちても這い上がって立ち上がれ。


触れるか否かの距離で君の隣に佇む。
歪んだ瞳の奥には、凛と確かに燃ゆる紅い光を、湛えていた。
さあ、吼えろ。
世界に渡らせろ。


荒ぶれる計数で出来た地に冴える、月の様なモノだけが、僕たちをただ見ていた。




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蟻計画風味。
トーマさんがデレデレです。
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