純醇チョコレヰト、マサルの場合



・バレンタイン話





確か、飲むと笑い上戸になるんだよね。ひたすら笑ってるんだ。こっちまで可笑しくなっちゃうよ。

ちゃんと恋人の日に帰ってきてくれただけで嬉しいんだけど、君が好きそうなチョコレートを用意したんだ。こんなにも僕は幸せなんだよって、伝えたくて。
君、お酒入りの好きだろ?
と思ってちょっと良いものを揃えたんだよ。美味しいって、食べる君の笑顔が見たくてね。

「マサル、」

「ああ‥」

こんなにアルコールに弱かったっけ?ふわふわと幸せそうに笑ったまま抱き着いている、君。

急に押し倒される様に、タックルにも近い強さでなんか来たと思ったらそのまま。仰向けになった僕の胸元に顔をうずめてクスクス笑う。

‥まだ3粒しか食べてないよ?
そんなのでお酒飲めるの?

「マサル」

「んー」

「酔ったの?」

「ん、」

「眠い?」

「んー‥」

擦り寄りながら、ただ笑いながら。
彼の髪がふわふわと眼下に舞う。
うーん。幸せだな。

「‥あつい、」

「え?」

「顔あつい」

いつの間にか唇が塞がれていた。
触れるだけの、優しいそれ。

「トォ、マ」

珍しく眼の奥は欲望で燃えていた。いいね、その瞳。クセになりそう。

淡白‥と言うよりかは恥ずかしがり屋(君は認めないけどね)のマサルからねだるなんてそうない。
もしかして、今日という日にテンションが上がっているのかな?
僕だけが舞い上がっているんじゃないかって、それは要らない心配だったね。
口元に残るアルコールとチョコレートの香りがふわりと鼻をくすぐる。
うん、やっぱり僕の選んだ物に狂いはなかったみたいだ。

「マサル、」

服の下に手を這わすと、ピクリと体が震える。いつも体温が低いと言われるから、きっと火照った体には冷たかったのだろう。

次第に、視線だけじゃなく、手も足も絡み合って、君から薫る香りに僕まで纏めて融かされていくみたいだ。

だって、今日は、


Happy Valentine...!!
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