紅い芽



・マサルハピバ記念de兄貴総愛され話
※スペシャルゲスト(笑)の太一とタイキとマサルはタメでマブダチ的な若干パロ状態(通称萌三人組)
・一応トーマサてかトンマサ










春だ。4月だ。2日だ。
そう、マサルの誕生日だ!
今年は桜も早めに咲いてもう満開だ。菜の花畑の(ちょっと臭いが気になるが)発色の良い黄色に敷き詰められた土手沿いの景色は圧巻だ。天気も良い。絶好のお花見デート日和だ!

「お〜!今年は桜が満開だなあマサル」

「いい天気だし、気持ちがいいな、マサル。」

「へへっ、太一もタイキも機嫌いいなあ。なあトーマ?」

「ああ、うん‥春だし‥」

そう、このマサルの自称保護者二人組が一緒に居なければ‥完璧なお花見デートプランだったのに‥台無しだ!

「トーマ、いま俺たちが邪魔でせっかくのデートプランが台無しだ!‥とか思ったろ?」

太一にがっしと肩に腕を回され、にやんと笑いながらの台詞が図星のため自然と頬がひきつる。

「そ、そんな、、、」

「太一、無理矢理ついて来たようなもんだからしょうがないだろ?今日はゴメンなトーマ。でももうちょっと居るから」

爽やかな笑顔でダメ押しをしてくるタイキにカマイマセンヨしか言えない自分に嫌気がさしたのは‥これが初めてではない。
まるでマサルの父親的に接するは八神太一。友情を深める因子として喧嘩も取り入れる彼は、マサルと拳を交える事をいとわない数少ない相手だ。
一方母親的に接するは工藤タイキ。ほっとけない病以外は冷静かつクールにマサル(とたまに太一)の暴走を制してくれる心強い人である。

僕とマサルが出会う前から二人はマサルの友人だ。特に今のマサルからは想像出来ない過去を彼らは知っている。その時の話をマサルはあまりしたがらないし、聞かないから詳しくは知らないけれど、そのマサルを知っている。それだけでも妬ましいやら羨ましいやらで仕方ないのに、頭の回転も早く口も達者な二人に勝つのはいくら僕でも分が悪い。
結局なんやかんやと丸め込まれ、いつも三人を一歩後ろから見る立場になるのだ。
マサルの恋人は僕なのに!

「なんだよトーマ、そんな後ろ歩いて」

ふとこちらを見やったマサルから声がかかった。おおっぴらに言えない文句をぶつぶつとぼやいていたら、いつの間にか歩幅が違ったらしく距離ができていた。

「なんだよ、機嫌わりいの?」

「いや、そういうワケじゃ‥」

では機嫌が良いのかと聞かれてもそうではない、そうではないのだ。そう、拗ねているだけなんだ。至極簡潔にいうと。(マサルの両隣が原因でね‥)

「トーマ腹へってんだとよ」

「もうかよ」

「朝あんまり食べなかったらしいぞ。マサル、オレたちの分も含めて何か買ってきてくれよ」

一体また何を考えてるのか。空いてもない僕の腹を言い訳に、太一とタイキはマサルを買い出しに行かせようと相変わらず絶妙な掛け合いをみせた。

「俺、焼きそばな!これお金。トーマは?」

「あー‥じゃあ同じ焼きそばで‥これで頼む」

「なにか甘いのがいいなあ‥タイヤキとか。はい、お金」

「しょうがねーなーまったく。」

「主役にお使い頼んでわりぃな。お釣りは好きに使っていいぜ!」

「お、さすが太一、分かってるじゃねーか!」

「僕のも好きに使っていいよ」

「オレのも。」

「へへっ!サンキューな、みんな!」

すぐ戻ってくっからよ!と叫びながらマサルは足早に屋台へ向かい、姿はやがて人混みに消えていった。
桜並木の土手を外れた路地はお祭りよろしく屋台と人で賑わっていた。
皆、春というのに浮かれているのだ。青い空。薄紅の桜にレモン色の菜の花畑。淡くて眩しいパステルカラーの景色だ、ウキウキしない方がおかしい。
僕だってマサルを迎えに行くまではそうだった。浮かれていた。若干小躍り気味だった。‥この二人も一緒に行くとマサルに着いてこなければ‥。

「よーしっ、マサルが帰ってくるまでここで待ってるか」

「トーマも座れよ」

タイキが手招きしている。
土手に設置された丸太の簡易ベンチは風景によく合い、見上げれば青をバックに桜たちだ。休憩がてら見物も間近にできるのでどこもベンチは一杯だが、目敏い太一が空席になったベンチを間髪容れず確保したのだろう。
ていうか、なぜ真ん中が空いているんだ‥。4、5人が座れる大きさだが、太一とタイキがゆったり座っているため端に有余はなく、完全にここに座れと言わんばかりに真ん中だけがポッカリ空いている。いや‥確実に座れと言っているなこれは‥。
逆らう勇気もないので大人しく座る。
なんだろう。両側から圧を感じる‥。

「おーっし、トーマ!今日はいい機会だし、言っておきたい事があって着いて来たんだ、俺たち」

「‥言っておきたい、こと、ですか?」

「そう。マサルのことでさ。マサルの‥昔話、とか」

「それって僕と出会う前の?!」

なんという風の吹き回し。マサルが言いたがらない唯一の事を、友人の二人が(おそらく)勝手に僕に喋るだなんて‥マサル以上に二人の思考が分からない。

「そう警戒すんなって!」

「あんまり身構えず聞いて欲しいんだ」

「いいか?一回しか言わねぇぞ?」

「わ、分かりました‥」

交互に話しかけられながら聞く態勢を整える。少し緊張しているのか手にはうっすら汗をかいていた。

「マサルの親父さん、まだ行方不明のままだろ?あいつは家族を頼むって言われて、だから自分が守るんだって、それだけを糧に生きてきたようなもんだ」

「でも母方の親戚からはおじさんの事を非難する人も居たみたいで、けっこう参ってたみたいなんだ、マサルのやつ‥」

「そう、なのか‥」

「今でこそ喧嘩番長名乗って楽しそうに拳を交えてるけど‥前の喧嘩は悲惨、だったかな。なぁ、タイキ」

「そうだな‥強迫観念みたいに強くなくちゃいけない、負けちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だって感じだったから‥見ていて痛々しかったよ。身体中傷だらけにして、警察の世話になったのだって一度や二度じゃないんだ」

「全然、今と様子が違ったんだな‥」

想像が付かない昔のマサルの姿に胸がざわついた。確かに初めて会ったような頃マサルの信念に過剰とも思えるナニカを感じていた事はあるが‥。

「それでよ‥それだけならまあ、そういう荒んだ時期もあったなーくらいじゃねえか。ところが他にも‥なあ?」

「あー‥うん、」

「?」

急に言葉が尻すぼむ太一に言いよどむタイキ。なんだろう。悪い予感しかない。

「髪型のことは知ってるよな?父親が帰ってくるようにって願掛けだ。だから昔から髪は長い方だったんだ」

「まだ小学生の、身体も育ってなくて男女区別がつきにくい時からあの髪型なんだ‥言いたいこと、分かるだろ?」

「はい‥分かるけど‥分かりたくありませ‥ん」

「マサルはそういう事だって気付いてないけど、ぶっちゃけ変態どもから襲われかけた事もけっこうあったんだよなー。もちろん二人で止めたけど、力ずくで。」

笑いながら太一が言うが、目が笑ってない‥。

「あの容姿でさ、誰も寄せ付けず心許さず傷だけを纏っていく様ってけっこう耽美で‥。正直オレも魅せられたんだよね」

さらっとタイキがもの凄いことを吐く。あれ?マサルのマブダチ‥ですよね?

「俺は今でもマサル狙ってるけどな」

「え!!?」

「じょーだんだよ!」

かんらかんら笑う太一に紛れ、小さな声でタイキが嘘つけと呟いたのを僕は聞き逃さなかった。

「でもよ、自分の事を顧みない危ない生活からちゃんと抜け出したのは、トーマ!お前と出会ってからだぜ?」

「えぇ!ぼ、僕?」

「マサルは否定するんだろうけど、やっぱり恋は人を変えるんだなって思ったよ」

くすくすとタイキも笑う。これは‥誉められている、のか?

「信じてねえな?これでも俺たち応援してんだぜ?」

「そうそう。マサルに悪い虫ついたら困るしな」

「はは‥虫除け、ですか‥」

「そう卑屈になんなって!俺もタイキもお前ならって思ったんだからさ!」

「ああ、言い方がちょっと悪かったな。これからもマサルを頼むぜ?トーマ」

「太一‥タイキ‥!」

なんてことだ!公式に認められたっていうか、なんだこれ‥サユリさん達から言われるより二人からの方が感極まる‥!
ずっとマサルを見てきた友人からの言葉だからこそだろう。思わず泣きそうになった。

「もちろん、泣かしたりしたら‥分かってるよな、トーマ・H・ノルシュタイン?」

「‥‥‥え?」

「ほら、オレたちマサルがやっぱり大事だからさ。今でも一番、ね。」

両方から肩にポンと手を置かれ、冗談めいた時とは一転しての低い、声。もうやだこの二人。

「おーいおまたせー!」

遠くにぶんぶんと手をふりながら、小脇に大量の屋台飯を抱えたマサルの姿が見えた。

「いくらなんでも買いすぎだろ‥、こっちだマサルー!」

苦笑いしながらも立ち上がってベンチに促す様に太一が手をふり返す。
タイキがホントに頼むぞって僕の背中を押した後、同じく立ち上がって手をふり出した。
じんわり暖かいものが胸に広る。
ふと目が合った太一も柔らかく笑いながらグッと親指を立てた。

「任せて下さい」

だってマサルを想う事なら誰にも負ける気はしないし、つもりもないから。
僕も腰をあげ、マサルを迎えながら改めて言葉にする。

「誕生日おめでとう、マサル。」

「ありがとな!たっくさん買ったことだしみんなで食べようぜ!」

ベンチに広げられたできたての匂いに小腹が空いてきた。
ああ、言いたいことは沢山ある。
産まれてきてくれてありがとう。
出会ってくれてありがとう。
君という紅い芽を開花させたのが自分だなんて、なんて幸せなんだろう。
僕は君が、大好きだよ。

「なんだよトーマ。機嫌良くなってんじゃん」

「最初から悪くないよ。うん、この焼きそば絶品だね」

目配せしながら笑いあった太一とタイキも、それぞれが頼んだものを口に運ぶ。

「うまい!」

「ほんとだなー」

「遠慮なく使わせて貰ったからじゃんじゃん食えよな!‥で、太一とタイキは今日ずっといんの?」

「なんだよ‥俺たちが邪魔かぁ?」

「やっぱりトーマがいいかぁ、」

にやんと意地悪く笑いながら言う太一に、ガックリと大袈裟に肩を落とすタイキ。みるみるマサルの顔は真っ赤になっていった。

「ばっ‥!ちが!ただの確認!それに今日はトーマと約束してたから‥それだけだっ!」

顔が真っ赤のままガツガツと焼きトウモロコシを頬張るマサルに盛大に頬が緩んだ。
そう、一番大事な日に、友人より家族より‥僕を選んでくれたんだよね。

「締まりのない顔しやがって‥!」

太一の肘鉄砲が今は応援に思えた。

「心配しなくても後で帰るよ。ただ夜はトーマが独り占めなんだからさ。いいだろ?今くらい。」

マサルの顔をますます赤くさせながら笑うタイキにつられて笑う。

今日は4月だ。2日だ。マサルの誕生日だ。早めに咲いた桜がちらちら降る景色は心穏やかにさせるばかり。

「いい日だなぁ、」

思わず呟くと、そうだな。と両側から聞こえた同じ感懐が、ただ嬉しかった。



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ネタ元は安心の姉さまより!←
昔のマサルはとがってたらいいなとか、太一さんとタイキさんと幼なじみ設定やばす!とか、とがってた様子が変態どもに受けてたらいいとか、前に話してたのでマサルのハピバ記念で書こう!と何かのスイッチが入り無心に仕上げた所存(笑)
姉さまにチェックして頂いたのであっぷします。
特に太一さんの感じを損なわないよう気をつけたけど‥難しかったの一言なのす(笑)
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