追記
3.『世界を守った救世主は世界で一番不幸になりました』
町には、いや世界には歓喜の渦が巻き起こっていました。
不安の因子。
悪の根源。
「魔王」を「救世主」が、見事討ち破ってみせたのだから。
世界には平和が訪れました。
花は咲き乱れ、鳥はさえずり、風は穏やかに流れ、空はキラキラと輝いていました。
世界には幸せが訪れました。
少女は踊り、少年は笛を吹き、老人は手を叩き、赤ん坊はきゃっきゃと笑っていました。
世界には望んだ結末が訪れました。
世界には愛が溢れていました。
世界には思いやりが満たされていました。
世界には、世界には‥。
世界には、奉られ英雄となり、一番に正当な対価を受けるべき「救世主」は、世界で一番、不当な対価を支払いました。
誰も気付きません。
誰も知りません。
祝福に満ち充ちたこの世界に、不幸な者など存在しないからです。
殺されました。
殺されました。
黙殺されました。
「救世主」は泣いていました。
きっと嬉し涙でしょう。
嗚呼、ハレルヤ!!!