追記


もう回復する余地も無い体に、ああついにここまでかと思うが隠忍する。それは君が自分に向けた笑みが、珍しく年相応の屈託無く笑う表情で、ただそれを護りたいと思うが為に。

勿論そんな浅はかな我慢はとっくにバレていたのだが、寸前まで悟られていないとしたのは、君が俺を信じているからだ。

君は例え相手が誰であろうと犠牲の上で得る安全と勝利は良しとしない。だから仲間である俺たちが「そんな事」はしないと、するはずがないと信じている。


だからこれはある種の裏切り。


もう傍にはいれない傷んだ身体に自棄を見出だしたのもあるし、長年の決着をつけるという行為にやっとこれで浄化される気がしている、自分だけが持つ欲望を練り込んでいたのだから。

ありがとうタイキ。
そしてすまない。

思えばタイキには与えてもらってばかりだった。護るという形でやっと対等なつもりになっていたが、実際はひたすら君が包み込む様に守って、慈しんで、労っていたように思う。

初めて君に触れた時、とても優しくて、暖かくて、眩しかったのを覚えている。

この選択は愚かだと自分でも思う。もう過去は過去でしかないというのに。君の心をえぐるだけということも、解っているのに。

でも、駄目だ。誰かがちゃんと清算しないといけないんだ。これは最早使命だ。だから俺は行く。解ってはくれるけど、きっと受け止めてはくれないんだろうな‥君は聡明だから。でも強くもある君は、いつかは全て受け止めてくれるのだろうと確信している。そうして俺はとうとう君に甘えっぱなしだったな。

タイキ、
タイキ。
最後に伝えた言葉も、ずっと変わらず君に言ってきた事だけど。改めて聞いて受け取って欲しい。

そして残骸としてひとひらの自分を置いていこう。いつも傍にいた証の、いつも傍にいる証の。漆黒の、一枚。


ありがとう、タイキ。
ありがとう。

俺の為だけに流してくれる涙が何より甘美で嬉しく感じている自分を嗤ってしまうが、事実なのだからしょうがない。

だが泣かないでくれ。
君には笑顔がよく似合う。
いつでも笑って、笑っていてくれ。


いざ、さらば。
この台詞は胸にしまって。
視界はただの白に、塗り替えられた。



‥何を書きたかったか忘れた‥
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