追記
「お前の母は、とても美しい人だった」
「聡明な人で」
「強い人だった」
「本当は脆い人だったかもしれない」
「でもわたしが弱い人間だったから、ずっと強くいてくれた」
「優しい人だった」
「そして、愛しい人だった‥」
「何よりもわたしを愛してくれ、」
「誰よりもお前を愛した人だった」
「清らかで、真っ直ぐあれ」
「あの人の様に。」
「お前の笑い方はそっくりだ」
「‥今だから言える」
「今更だと、お前は怒るかもしれないけど」
「生まれてきてくれてありがとう」
「最後まで、あの人を守れず、すまない」
「『トーマ』という名前の中に、意味に、あの人の欠片が入っている」
「大切に生きてくれ」
「ありがとう」
そうして、静かに泣く父に。
母が彼を愛した理由が、少し。
少しだけ、解った気がした。