追記


緩慢な拷問で牙を抜かれたライオンが、きつくなった檻から出て行く。行ってはならない。傷を負って、また檻に囲まれ閉じ込められるだけなのに。そうすれば、今度こそ二度と君とは会えなくなるというのに。ならばその前にどこまでもお前を侵略してやろうか‥。若い君はその未来を、私の心をまだ知らない。


「何故こちらへ来たのだ、マサル」

「おー!クレニアムモンじゃん」

「全く‥一体何を考えているんだか‥いや、何も考えていないから来たのか、」

「うっせーな!このままアグモンや皆たちとサヨナラなんて‥出来なかったんだよ。それに、向こうにはトーマや父さんが居るからな!俺はこっちで、自分にしか出来ない事を探してしてみたいんだ!」

疑いなど知らない、真っ直ぐに先を見つめる瞳は今まで見てきたなにより美しく、吸い込まれそうな程だった。

「いいのか‥?こっちは人の世界と違って、まだけして平和とは呼べないし‥、それにその身も我々と異なり、いつ生死に関わる重傷を負うか分からないんだぞ」

「なんだよ、心配してくれんのか?大丈夫だって。喧嘩は向こうでもしてたし、俺は一人じゃないからな」

な、アグモン!おーう、と間延びした返事の相棒とニッカリ笑い合う。

‥なるほど。
確かに生温い生活をしていたのでは、あんな戦いは出来ない。

きつくなった檻から出てきたのはそうだが、牙を抜かれたのはどうやら私の様だ。

いつまにか魅せられていた彼に、どうやって「私」を植え付けようか。どうやって君の機嫌を損ねず守っていこうか。笑いかける君を前に、ただ密かに想った。


蟻企画風味。
緩慢な拷問は平和な世界。
きつい檻は人間界の比喩的な。

何かあって二度と会えなくなる事と、この気持ちがばれる事を無意識に恐れるクレ様が、まあ良い自分が守るしかないって感じ☆ベイベェ!ってなる話←
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