PERSONA5 the FAKE | ナノ


16

まず、彼が対等な立場の『友人』であるのは勿論として、そして『猫』の姿をしているというのも加味した上で、この状況は『飼い犬に手を噛まれる』というそれに近いものがある。
結論として、メメントスの迷路構造と“車”という武器を利用された怪盗団は、モルガナと美少女怪盗に逃走を許した。現実世界へと戻り、次の策を考えながら渋谷の街を徘徊する彼らの顔にはすっかり疲労が浮かんでいる。
「これからどうする?」
「また、学校で奥村先輩と話してみるしかないかな。聞いてくれるかどうかは分からないけれど…」
「あの様子じゃ、モルガナも相当ヘソを曲げているな。説得は難航しそうだが…」
祐介が不安と呆れの入り混じった溜息を零し、脇の裏道を車が通り過ぎたところで少しだけ静寂が訪れる。しかしそれも束の間、足元のコンクリートを都会の砂埃がそっと吹き抜け、それに乗せられて聞き覚えのある声がどこからか聞こえた。

『だ…れか…』

助けを求める声だ。誰もが知っているこの声の主は――
「今の…モナの声!?」
「うん、近くにいると思う!」
「ちょっとアレ…!なんか、ヤバげじゃない…!?」
各々がモルガナの姿を求めて視線を散らす中、杏が指差した先に、何やら言い争いをしている男女の影が見えた。男が女を引っ張り連れて行こうとしているが、女の方は拒絶している。
「あれ、奥村先輩じゃ…!」
不穏な空気の中にいる少女もまた、ここにいる誰もが知っている人物――奥村春だった。

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