PERSONA5 the FAKE | ナノ


10

蓮と咲がルブランの屋根裏部屋に到着したのは、午後7時をちょうど過ぎた頃だった。
「お疲れ…」
「なかなか厳しかったな…。この疲労感、初めてペルソナに目覚めた時以来だ」
双葉と祐介は慣れない長距離走を経てすっかり伸びてしまっている。杏は無事に戻ってきたクラスメイトを見て、ホッと胸を撫で下ろした。
「よかった、二人一緒だったんだ。ちょっと遅かったから心配してた」
「ごめんね。蓮くんとは、シャドウを撒いてる途中でたまたま会って」
「その追手が結構しつこくて、やり過ごすのに少し時間がかかった」
「あとは竜司だけね。今ニュースをチェックしてたんだけど、『オクムラフーズのエントランス荒らし』がまた話題になってるわ」
真がスマホの画面をメンバーの方に掲げ、蓮と咲が覗き込む。二人が一通り読み終えたところで、誰もいない筈の下の階で空気が動く気配がした。階段を全速力で駆け上がる音が響き、薄暗い屋根裏部屋に眩しい金髪が飛び込んできた。
「だぁ!クソっ!なんで俺ばっか追ってくんだぁ!?」
「竜司くん!よかった無事で。ごめんなさい、いっぱいシャドウ引き連れてるの見かけたんだけど、全然追い付けなくて…」
駆け寄ってきた咲の謝罪に、息を切らせながら竜司が顔を上げる。
「キツかったぜ…ったく、美少女怪盗さまがドア開けっから!」
モルガナと一緒にいた少女。彼女は、怪盗団が開けられなかった扉のセキュリティをあっさりを開けてしまった。その結果シャドウと相見える事になり、今回のドタバタ逃走劇に繋がったわけだが、気にすべきは結果ではなく過程の部分だ。
「あのドア、たぶん生体認証式だったのに、どうやって…」
双葉はずっと、そこが気になっていた。生体認証式ということは、パレス側――この場合はオクムラフーズという企業、もしくは主である奥村邦和に許可された人間しか入れないセキュリティシステムの筈だ。
「あの子、何なんだろうね?」
「ペルソナ使いって言ってたよな?本当なのか?」
「見た目、それっぽかったけど…」
モルガナが新たに組んだペルソナ使いの少女は一体何者なのか。全員が沈黙して考える中、ふらりと顔を上げた真がそっと口を開いた。
「…私、どこかで見たことある気がする」
彼女の言葉に全員の視線が集中する。
「マジ?どこの誰たよ!?」
「多分、学校…だったかな」
眉間に少し皺を寄せて首を捻る様子を見るに、真も確固たる自信があるわけではないらしい。その記憶へ対する信頼は五分程度で、憶測のようなものも少なからず入っている。
「秀尽の生徒ということか?」
「そんな気がするだけ。仮面被ってたしね」
ただ、この勘にも似た記憶が、一つの糸口であるのも間違いない。懸命に頭の中に残っている映像を捻りだしながら、謎の少女とモルガナを捜し出すための方法を考える。それから、新島真はひとつの答えを導き出し、メンバーの顔を見回した。
「生徒会室に、全校生徒の写真名簿があるの。明日、片っ端から調べよう。写真を見たらピンとくるかもしれないし」
地味で地道な作業だ。だけどこれが、高校生の自分たちが無理なく手を伸ばせる範囲なのは間違いない。真は、怪盗団メンバーのひとりとして、また先輩の立場として、“いま出来る最大限の調査”を提案した。
「賛成。五人でやればなんとかなるんじゃない?」
「うん。彼女の事が分かれば、モルガナにもう一度接触できるかもしれないもんね」
「なら、俺と双葉でオクムラフーズのことでも探るか。廃人化との関係も調べた方がいいからな」
「おっし、こっちは任せとけ。吊し上げてやる…!」
シャドウ騒動もあり、モルガナとは結局まともに話が出来ていないままだ。また闇雲に探したところで、再会と和解の望みが薄いのは目に見えている。ならば、彼が新たに組んだ人間の素性から探すのが最も効率的なのは間違いない。
明日のそれぞれの動向を決め、蓮と双葉以外のメンバーはルブランを後にし、帰路についた。

prev / next

[ back to list ]



×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -