じ、っと目の前の光景に釘付けになっていた。
明るい室内の真ん中辺りには炬燵が置かれていて、そこから少し離れたところにはテレビがある。見慣れた部屋なのは自分の部屋なのだから当たり前と言えば当たり前で。


「あ、平助、蜜柑とって」
「ほい」
「・・・・おい」
「平助、喉渇いた。お茶」
「またかよ・・・。ちょっとは自分でやれよなー」
「だって平助の方が近いじゃない。ねえ、早くしてよ」
「・・・・おい」
「近いったって、総司もそんな変わんないじゃん」
「いいから、早く」
「・・はいはい、わかったよ」
「あー、落ち着く。炬燵ってやっぱいいよね」
「そうだなー」
「・・・・おい!」
「あ、れ?一君?どうしたの?」
「そんなところで突っ立ってないで一君も早く入りなよ。寒いでしょ?」
「・・そうだな。・・・・って、違う!」
((一君がノリツッコミした・・))
「ここはどこだ」
「「一君家」」
「じゃあなんであんたらがいる」


そう言うと総司と平助は一瞬顔を見合わせたあと、きょとんとした表情で再び俺の顔を見た。
そして一言。

「「一君家だから」」
「・・意味がわからん」

はあ、と溜め息をついて頭を抱える。
そうだ、ここは俺の家であってこいつらの家じゃない。普段自分がくつろげるはずの空間は総司と平助に占領され、用意してあった炬燵の上の蜜柑はどんどん減っていき、平助が持ち込んだらしいゲームソフトが床に散らばっている。



「いいじゃない、たまの休みに一君家に遊びに来たって」
総司が悪びれもせず、さらりと答える。少し、イラッとした。
「・・・来るなと言っているわけじゃない。ただ、自分の家でもないのにくつろぎすぎではないかと言いたいだけだ」

そもそも、迎え入れたというよりは玄関のチャイムが鳴ってドアを開けた瞬間、「「おじゃましまーす」」と声を揃えていそいそと靴を脱ぎ勝手に入ってきたのはこいつらで。入ってきたと思ったら真っ先に炬燵に潜り込んで「あー、寒かった」やら「幸せー!」とやら叫んだのはこいつらであって、俺は迎え入れたわけじゃない。決してない。

「ねえ一君、僕お腹空いた」
「あ、オレもオレも!」
「人の話を聞け!」
「温かいものがいいよね」
「それ賛成!なら、おでんとか鍋とか?」
「・・・・・・・。話を聞かんなら作ってやらん」
「「聞きます」」
「よろしい」

ようやく静かになった腐れ縁の二人を見てふう、と安堵の息を吐く。こういったことは別に珍しいことでもなく、もう何度も経験しているので今更と言ったらそこまでだが、いくら知った仲とはいえ勝手を許すわけにもいかない。
わかっていてやっている総司も、知らずにやっている平助も、どちらも質が悪い。

「・・で?」
「「え?」」
「何が食べたいんだ?」
「「一お母さん愛してる!!!」」
「帰れ」





斎藤さん(苦労人)の憂鬱
(もう一君てば、冗談だってば。寒いし、鍋にしようよ)
(一君ゴメン!冗談だから機嫌直してくれよ!)
(・・仕方ないな)
結局世話を焼いてしまう辺り、やっぱり腐れ縁というのはやっかいなものだと思う。






110317
この三人だと、斎藤さんが二人のお母さん役で間違いない(真顔)←
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