「ねー…、ヒュウー」
「いくらオマエの頼みでもアレはちょっとな…」

コテリ、首を傾げて幼なじみがオレの名前を呼んだ。その目はどこか期待に溢れていてキラキラして見える。視線の先には観光地によくある、顔出し看板。
ちらり、看板からメイに視線を戻す。
「クッ…!そ、そんな子犬みたいな目してもダメなものはダメだ!!」
「ヒュウーーー」
ダメ?
そう聞いてくるメイは贔屓目なしに可愛い。つい甘やかしそうになって、それを抑えるためにぐっと強く握り拳を作った。いくら大事な幼なじみのお願いとはいえ、この年でアレは。おまけに女とだなんてどんな目で見られるかわかったもんじゃない。
「たいして人、いないよ?」
「……………」
先回りするみたいに、というかコイツ、オレの心読んだのかと思ってしまうくらいのタイミング。尚もメイは食い下がる。

「ヒュウと写真、とりたいなー」
「…………ダメだ」
「ヒュウくん…」
「うっ」
「ヒュウにいーーー」
「っ!!あ〜もうわかった!撮ればいいんだろ撮れば!!」
「わーい!ヒュウにいありがと!」
「…おう」

オレの返事を聞いた途端、先に駆けていって早く早くと手招きをするメイ。
その姿を見ながらふう、と息を吐く。
「ヒュウー!ね、ね、早く!」
「わかったから急かすなって。すぐそっち行くから」
「うん!」
満面の笑みに「仕方ねえなあ」なんて呟くぐらいにはオレはこの幼なじみに甘いわけで。
少し離れたところにいるメイに向かって、苦笑交じりに一歩を踏み出した。






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