「で?最近できたっていう彼氏とはどこまでいったの〜?」


「ちょ、そんなこと聞かないでよ!」


「私たちが恋のキューピッド役してあげたんだから、聞く権利くらいはあるのよ!」


「そうそう!で、どうなの?キス…とか?!」


「っもー!ひみつー!」





キス…か。





教室で女の子たち数人が丸く輪になってそういう話をしていた。

別に盗み聞きしてるわけじゃない、女の子たちの声が大きいだけ。

それに内容が気になってるわけでもない。

誰と誰がキスしたとか、良かったねとは思うけどそれ以上の感情は何も沸かない。

ただ、  キス  という単語に気をとられただけ。



最近俺に彼女ができた。

元々の関係はクラスメートというか…友だちだったんだけど、恋人になった。

俺から告白して、付き合えることになった。

彼女が「はい」と、か細く震える声で返事をしてくれたときは泣きそうになった。

それくらい嬉しくて、それくらい彼女のことが好きなんだ。



出会ったときから好きだったんだけどそれと同時に友だちだったから、その関係を壊したくなくて悩んだ時期もあった。

でもやっぱり手に入れたかったから少しの希望にすべてを賭けた。

それが望んだ結果になって本当によかったよ。



彼女はずっと俺と友だちとして接してきたわけだから、いきなり恋人らしいことをするのはきっと抵抗があるに違いない。

だから俺は少し我慢しなくちゃだめだ。

彼女のペースに合わせないと。

無理やり、とか嫌だし。

でも、ずっとずっと好きだった子とようやく結ばれたわけだし、触れたいと思うのは自然な感情だと思う。

ああ、どうすればいいんだ…。



俺は最近ずっとこの考えを繰り返している。





「鳳、部活行くぞ」


「あ、うん」





でも今から部活だし、集中しないと。












「おい鳳、今日やけにノーコン目立つぜ?調子悪いのか?」


「ぇ、あ、すみません…」


「や、別にいいんだけどよ。無理して体壊すなよ」


「っはい、ありがとうございます!」





宍戸さんに迷惑をかけてしまった…。

テニスに支障がでるのはよくないし、もう、悩むのはやめないと。

このもやもやを振り切るためにも、ここは男らしく、潔く、彼女本人に直接聞いてみようかな…!





「あ、鳳くん!部活おつかれさま」


「ありがとう。名前ちゃん、待ってる間寒くなかった?」


「うん、大丈夫。手袋もマフラーも耳あてもしてたから!」


「そっか、よかった」



そう言って名前ちゃんの手を握る。

すると名前ちゃんの手がピクッと反応した。

緊張してるんだね。

俺だって少し緊張してるけど、名前ちゃんの方が緊張してる。

付き合ってるのに、って女慣れした跡部部長や忍足先輩辺りが言いそうだけど、これは結構進歩した方なんだ。

初めて一緒に帰るときに僕がすっと手を握ったら、名前ちゃんがすっごい慌てちゃって…。

そんなところも可愛いけど。



だから、キスへ進むのことに踏みとどまってしまう。

やっぱり、俺の願望よりも名前ちゃんのペースを優先した方がいいんだろうな。



「ぉ、ぉお、鳳くんっ!」


「(はっ。考え込んじゃってた)うん?どうし」



たの、と尋ねようと名前ちゃんの方に顔を向けた。

…あれ、名前ちゃんの顔が眼と鼻の先にある。

それにこの俺の唇に何か当たってる。

ついでに首が苦しい。



なに、これ、夢?










俺のネクタイを引っ張って名前ちゃんは俺にキスをした。










キス





もどる







「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -