滞りなく新居への引っ越しは済み、いよいよ今日から青学へと通うことになった。

始業式の日から少し経っていて、授業が始まるのも今日かららしい。

どきどきする……緊張する……けど、大丈夫!

自分にそう言い聞かせながら妹の名前は家を出た。










同じ制服を着た人々の群れについていけば道に迷うことなく無事に学校につき、校内案内図を見て職員室へ向かった。

失礼します、と中に入れば女性の先生が私の存在に気付いた。

そして恐らく妹の名前の担任の先生であろう人の名を呼んだ。





「苗字だな。おはよう」

「おはようございます。今日からよろしくお願いします!」

「よろしくな!そう肩に力を入れるな!緊張すんのも分かるけど、良いクラスだから安心しろ!」

「はい…」

「クラスは7組だ。行こうか」





担任の先生は山内先生という男性の先生だった。

若くて、元気ハツラツ!って感じがする。

その先生について7組に向かう。

どうしよう、足が震える…。





「ここだ。入るぞ?」

「っは、い」





先生はガラッとドアを開けて中に入る。

私も続けて入ってみるとクラス中の視線を感じた。

体温上がる…!





「静かにしろよー。今日からこのクラスに新しく入る苗字だ。苗字、自己紹介だ」

「っはい!…苗字妹の名前です。えっと…よろしくおねがいします!」





言うことが何も思いつかなくてお辞儀をした。

あ、頭…真っ白になりそう…。

向き直ったところで拍手が聞こえた。





「じゃあ席はあの空いてるところだ」





そう言われて、視線を体中に感じながら移動した。

転入生って大変なんだなあ…。

そんなことを思いながら座ると、隣の席の男の子が喋りかけてきた。





「不安だろうけどよ、このクラスは良い奴ばっかだから安心しろよ!」

「え…?」

「俺は井藤。よろしくな」

「俺、藍川!」

「私は鍋山です!」

「あたしのことはりっちゃんって呼んでー!」





最初に名乗ってくれた井藤くんを筆頭に、次から次に周りの席の子が自己紹介をしてくれた。

どうすればいいのか分かんなくて戸惑っちゃったけど、すごく嬉しい。

私も自己紹介しなくちゃ…!





「苗字妹の名前、です…っよろしく、ね!」

「っかわいい!」





そんなばかな!

多分、鍋山さんという女の子が言ってくれたんだろうけど…心の中で思わずつっこんでしまった。

すると誰かが私に質問をしてきた。





「どこから来たの?」

「神奈川から…」

「へえ!どこの学校行ってたの?もしかして立海大?」

「(立海大…?ああ、聞いたことあるかも)ううん。女子校、です」

「女子校?!すっげー!俺も行きてー!」

「神奈川の女子校といえば……もしかして、白原?」

「うん。そこに通ってた…」

「頭良いんだー!すごいね妹の名前ちゃん!」

「部活は?何してた?」

「部活はしてなかった…です」

「そっか。じゃあバスケ部入んない?」

「いや、バレー部でしょ!あたし部長だからしごいてあげる!」

「出た。三野川のサド発言」

「サッカー部のマネージャーやってくんね?!苗字が居たら俺頑張れそー!」





入ったばっかりの私にたくさん喋りかけてくれるクラスのみんな。

その優しさがすごく嬉しくて、思わずにやついてまった。

井藤くんの言う通り、良い人たちばっかりだ!





「かわいい…」





妹の名前曰くの「にやついた」顔は、周りの人たちからみるととても可愛い笑顔で。

ぽやぽやとほほ笑んでいる妹の名前は小動物を連想させる。

見惚れられていることにも気付かず妹の名前はただただ安心していた。

するとチャイムが鳴り、クラスメートは残念そうに呟きながら席に戻り各自授業の用意をし始める。

どうやら次の授業は理科で、移動するらしい。





「(理科室の場所分かんないや……みんなの後についてこっと)」

「ねえ」





教科書を取り出していると横から声がかかった。

見上げると、女の子が笑顔で私を見ていた。

照れる…!





「理科室の場所分かんないでしょ?一緒に行こう?」

「…いいの?」

「うん!あたしだってあなたと友達になりたいから!あたし、兄の名前妹の友人の苗字。好きなように呼んでね」

「私は、」

「妹の名前ちゃんでしょ!妹の名前って呼んでもいい?」

「もっ、もちろん!」

「ほんとに可愛いね」





そう言って妹の友人の苗字…は、よし!行こう!と笑顔を向けてくれた。

わ、どうしよう嬉しい!

そう思ってありがとうと伝えると、また笑ってくれた。










昼休みになる頃には、3年7組に転入生が来たという話は広まっていた。

普段ならば転入生がきたその学年だけにとどまる話なのだが、今回に限っては違う。

ものすごく可愛い転入生が3年7組に編入した、と学校中に広まったのだ。

もちろん、隣のクラスにも。





「7組に転入生来たんだって!それに可愛いらしいにゃ!」

「そうなんだ?」

「ねーねー不二ぃー!見に行かにゃい?」

「きっと他にもたくさん人が見に行ってるだろうからやめとこう?その転入生も気疲れしちゃうよ」

「ぶー」

「また今度ね」










キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り、終礼も終わる。

私の転入初日は質問攻めに遭って大忙しだったけど、なんとか無事に終わった。

心の中で安心してると、妹の友人の苗字が帰る準備を整えてやってきた。





「途中まで一緒に帰ろ!」

「うん!妹の友人の苗字は部活?」

「そうなの。3年生だから大会に向けて猛練習中!」

「そっか。ファイト一発だよ!」

「あはははははは!ありがとー」





大きなテニスバックをかつぐ姿がとても格好良い妹の友人の苗字と下駄箱で別れて、私は軽やかな気持ちで家へ向かった。





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