「よーし!そうとなったら、さっさと行こうか?」

「はいっ!」

「…あ、そうだ」

「どうしました?あ、他に誰か連れていくんですか?」

「あ、そうじゃなくてね。俺に敬語とか使わなくて良いよ?」

「良いんですか?」

「うん!フレンドリーにいこうっ!それにー名前ちゃんのが年上じゃん?お姉さんじゃん?」

「(あ、ほんとだ)わかった」

「俺の事いつもなんて呼んでる?」

「き、きよって…。(恥ずかしいいいいいい!)」

「嬉しいなぁ!じゃぁそのままで呼んでね!」

「うん」



こんな会話を生でできるなんて夢にも思わなかったな…。

信じられないけど、凄い幸せだ…っ!



「あとー」

「うん?」

「俺達の世界では名前ちゃんは中3だからね」

「…分かった。(夢小説の王道?)」

「でね、俺達の世界に来るにあたって、名前ちゃんには選択肢が一つ設けられます!」

「選択肢?」

「そう!」

「なんの?」

「名前ちゃんが通う学校、選べちゃうんです!」

「うそ!」

「ほんと!」



うわーうわーほんとに!?嬉し過ぎる!

じゃぁ私の御三家の氷帝・青学・立海大のどれかにしようっと。



「どこでも良いの?」

「良いよー!俺としたら山吹に来てほ 「私、氷帝に行きたい!」 …そっか」

「良い?!氷帝で良い?!」

「分かったから名前ちゃん落ち着いて!(やっぱり跡部クンのところかぁ…。残念)」

「やったー!」



オタクな私は大好きな氷帝に通えるとなってハイテンション。

きっときよ、ヒいてるんだろうな。

悲しいオタクの性だよね!仕方ないし、諦めるけど。



「名前ちゃん、跡部クンの毒牙にかからないようにしてねっ」

「え?」

「何かあったらスグ俺を呼ぶんだよ!?助けに行くからさ!」

「(そんなことないと思うけど)ありがとーきよ」

「(可愛いなぁ)」

「他に何か決めなくちゃいけないこととかある?」

「んー…とくにない、かな?」

「そう…あ、私の家とかはどうなるの?」

「えっとねー、マンションで一人暮らしだよ」

「分かった」

「遊びに行くから!」

「ほんと?待ってるね」



あっちの世界での私の生活についてきよに聞いていた。

どうやらお金の心配はいらないらしい。

どうなるんだろうな…不安と楽しみで胸がいっぱいだ。



「名前ちゃん」

「ん?」

「俺あっちの世界に戻ったら…テニスの王子様の世界に行ったら、名前ちゃんに会ってから今までのこと忘れちゃうんだ」

「………そうなの?」

「うん。名前ちゃんを連れてくのが俺の役目なわけだから、この役目を終えたら俺は元に戻るんだ」

「元に戻る?」

「普通の山吹中テニス部員に、ね」



そうだよね。

私のせいでこっちの世界に飛ばされて、自分がテニスの王子様の登場キャラクターのうちの一人だとかって勝手に理解させられて。

その記憶のまま戻ったらテニスなんかやってられないよね。



「けど、名前ちゃんのことだけは覚えてるような気がする。…確信のない自信なんだけどね」



苦笑いを浮かべるきよ。

私のせいで…



「ごめんね、私なんかを迎えに来ちゃったから…」

「いやいや、名前ちゃんは悪くないし、俺自身も名前ちゃんと同じ世界に住みたい、って思ったから」



だから、謝る必要なんてないよ!

嬉しいこと言ってくれるねぇ、千石清純。

流石女の子キラー!



「じゃぁ名前ちゃん、目瞑って」

「ん」

「いざ、名前ちゃんの望む世界へ…3・2・1…」



―パチン





もどる





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -