鳳、芥川以外のメンバーは部活の準備を整えながらも2人の帰りを今か今かと待っていた。

すると、遠くの方からドタドタと忙しなく聞こえる足音が近付いてきた。


ガチャ


「可愛かったけど逃げられちゃった!」

「お前だってダメだったんじゃねーか!」



向日の怒りも虚しく、芥川はそのままイスに直行しすでに寝息を響かせている。



「寝るの早すぎじゃね…?」

「ほんま三年寝太郎やな」

「鳳、逃げられたのか?」

「はい…」

「そうか…。次は日吉、お前が行け」

「嫌です」



日吉はピシャッと言いきると、ラケットとタオルを持ってコートに向かった。



「ッチ…じゃぁ次は俺と忍足で行く」

「(色仕掛け作戦…?)」



鳳が心の中でそれを口にすると向日がそれを代弁した。



「跡部と侑士?!2人が名前に近付くの?!絶対手出すなよ?!」

「失礼やな。跡部はともかく、俺をなんやと思っとるん」

「忍足……テメェ、それはどうゆう意味だ…?」

「そのまんまやで?」







放課後に「可愛い子コンビ」の襲来を受けた翌日。

名前は登校していた。



「(今日こそちゃんとドラマの話したい…この感動を心ちゃんに伝えたい!分かち合いたい!)」



そう思ったのもつかの間。



「え?!…は?!え?!」



校門を通り過ぎようとしたとき。

人気のない一瞬のうちに口を塞がれ、誰かの脇に担がれ、移動し始めたのだ。

いきなりのことで驚きながらも名前は手で口を塞ぐ手を剥がそうとする。

が、どうやらその相手は男らしく、力ではかなわない。

分かっていながらも奮闘していると裏庭に着き、降ろされた。



「なんですか?!誰ですか!?………………重くなかったですか?!」



誘拐犯に威勢よく「何するんだオーラ」を放ったけど、その人を見て驚いた。

跡部と忍足だ。

忍足とはがっくん伝いにちょっと喋れるようにはなったけど…跡部って…!



「最初の言葉がそれかよ」

「おもろいやっちゃなぁ」



と言いながら私を見て笑ってる。

レ、レアショット…!



「時間もねぇし単刀直入に言うが…苗字、お前、俺らのマネージャーになれ」

「俺からも頼むわ苗字さん」

「(なんで跡部が私の名前知ってるの?!一方的な面識しかないのに…)いや、あの…、無理ですよ」

「ジローが言うには…」

「あ、はい。それはまだ転入したばかりだったので断ったんです…けど、今はテニス部の人気を知ったので…入る度胸なんかありません…!」

「まぁ…もっともな意見やなぁ、跡部」

「…しょうがねぇ。奥の手だ」



2人とも私の前に立っていたのに、跡部の言葉を皮切りにして私の横に移動してきた。

……こ、心なしかものすごく密着されてる気がす、る…?



「マネージャーやれ」

「(っぎゃぁぁぁ…!)ほ、ほっぺ…撫でないでくださっ、い…!」

「苗字さんがやってくれたら俺毎日頑張れるわ」

「(っだぁぁぁぁ…!)手…っ、握らないでくれます…?!」

「マネージャー業は俺様が教えてやるから」

「(っひぃぃぃぃ…!)腰に手回すな…!」

「頼む。マネージャーやって?」

「っおととい来やがれバカヤロー!伊達眼鏡ー!泣きぼくろー!」



毎回毎回逃げてるけど、この場合はまさに逃げるが勝ちだと思う!

捨て台詞をはいて私はその場から全力で走り去った。

あれが中学三年生ですか…!?



「はっや……ほんま、おもろい子やな」

「俺様がここまでしてやったのに靡かないとはな…」

「跡部はなんでそないにあの子をマネージャーにしたがるん?」

「そうゆうお前はどうなんだ」

「俺?俺は…せやなぁ…楽しそうやと思て」

「…悪趣味」

「なんとでも」





「心ちゃ、ん…!」

「おはよ。どしたの?また息なんかきらせて……まさか!」

「大丈夫か名前?!何もされてないか?!」

「何?!次は誰が刺客だったわけ!?教えなさい宍戸!」

「…跡部と忍足」

「っ! そんな2人が…?!名前!大丈夫だった!?」

「(やっぱ跡部と忍足はそうゆうイメージなんだな…)」





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