昼休み。

朝、第一弾として行われた「名前ちゃんゲット大作戦★」(芥川命名)にて敗れた向日と宍戸は部室に向かっていた。

向日の意向で作戦会議室はテニス部部室となったからだ。



「よぉ、遅かったじゃねーか」



部室の扉を開けるとそこにはレギュラーが既に揃っていた。

跡部専用の椅子に浅く座り、向日と宍戸を見ながら口の片端をつりあげて笑っている跡部。

その横には眠た気な雰囲気を纏いながらも扉の方を見据える芥川。

反対側には壁に背を預けこれまた薄く笑っている忍足。

この3人を見ただけで気が重くなった向日は宍戸にこう呟いた。



「なぁ……この状況、断られましたって言いにくくね…?」

「…あぁ。長太郎見てみろよ…」



そう言われて向日は鳳の姿を探す。

が、すぐに顔を宍戸の方へ向き直した。



「あれはヤベェよ…!期待しまくりの顔じゃねーか…!!」



鳳はキラキラと目を輝かせながら宍戸と向日を見ていたのだ。

子犬のように。

それに耐えきれなくなった宍戸は頭を掻きながらこう言った。



「…あ"ー……ワリィ。断られた」



一瞬、しん、と静まり返ったあと、芥川が騒ぎだす。



「えー!なんでー!えー!うそー!なんでー!!ばか!宍戸とがっくんのばか!役立たず!!」

「ぉ、おい。落ち着けよ、ジロー」

「うっさい!跡部は黙ってて!何のためにこの2人に任せたと思ってんの…!」

「寝ぼけて無駄に怒っとんな、ジロー」



向日と宍戸に殴りかかる勢いの芥川を樺地に預け、跡部は次なる作戦を考えた。



「次はジロー、鳳だ。放課後に2人で行け」

「はい!跡部さん!」

「俺?!分かった、俺頑張る!頑張って名前ちゃんもらう!」

「寝ぼけすぎやで、ジロー……」



芥川以外のメンバーのため息が所々で聞こえた。





知らなかった!

氷帝の日直は1人でやるものなんだってさ!

大変だなぁ…と、考えながら私は日誌を書いていた。

もちろん心を部活へ見送ったあとに!

いやぁ…今日の朝はスリリングだった、な…。

あの後、私に遅れて教室へ戻ってきた宍戸とがっくんは心の説教を受けながら私に「急に誘って悪かったな」と謝ってくれた。

「私こそダッシュで逃げてごめんね」と伝えると宍戸に笑われた。(爽やかで格好良かったです)

がっくんには頭をなでられた。(可愛かったです)

気まずくならなくて良かった…っ!



「欠席なし、早退なし……よし、提出して帰ろう!」



早くリオと遊びたいな!

教室の電気を消して、ドアに手をかけたその瞬間。


バーンッ



「名前ちゃん!」

「苗字さん!」

「っだぁあ!!」



私の目の前にジローくんと鳳くんが現れた。

し、心臓に悪すぎる………っ!



「俺らが何言いに来たか分かるよね?」

「…う、ん…(心の言ったとおりだ…まだ勧誘は終わってない…)」



頷くと2人は私の正面に並び、胸の前で手を組んだ。



「名前ちゃんおねがーい!マネージャーになって!」

「俺からもお願いします!苗字さん!」



なんて見つめながら言うものだから物凄く照れてしまった。

ジローくん、心なしか瞳がうるんでるような気がする。(可愛すぎる…っ!)

鳳くんは首から十字架が覗いててそのポーズが様になってる。(格好良い…っ!!)

ッキー!ちくしょう!跡部め!可愛い子コンビを寄こしてきやがって……!

こんなの……こんなの……耐えられないよぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉおおぉぉおお!!!



「っあ!名前ちゃん!」

「行っちゃいました、ね…(足、速いなぁ)」

「っ見た?!名前ちゃん!顔真っ赤にしてたよ!お願いポーズに弱いのかな?!マジマジかっわE!」

「(確かに、可愛かった……)」

「名前ちゃん可愛いすぎだよー!」





こ、ここまで、来れば、だいじょぶ、か、な……。

ほん、とさっきは、すごく、すっごく、あ、危なかった…!!

あの可愛いさに負けて頷くところだった…!

あぁ……あぁ……ほんと、なんだ、私のこの状況……。



「夢小説ですか……」





もどる





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -