翌日。



「よし、着いた」



と、私は自分のクラスの前で呟きながらドアを開け、心を探す。

早く昨日やってたドラマについて語りたいんだもん!

うきうき気分で教室内を見渡していると後ろから声がかかった。

岳人くんと宍戸だ。



「名前!!」

「苗字!」

「「はよ!」」

「っおはよう!?どうしたの、そんな急いで…」

「ぇ、別に?つーか名前に話が!」

「私に話?なに?」

「あ、いや、ここじゃあれだから…」

「ここでも良いじゃ 「苗字ちょっと来い!」 うぇえぇぇええ!ちょ、ストップ!待、って!」



私の静止の言葉も聞かず宍戸は私の手を引いて猛ダッシュで走り出した。

運動部の走りについてけない私は転びそうになりながら必死でなんとか走っている。

私の後ろにいる岳人くんを見てみると悔しそうな顔をして宍戸を見ていた。(と、思う)

抜かされたのが気に食わないのかな!

負けず嫌いだもんね!

そんな暢気なことを考えながら宍戸のダッシュについてける私は案外、運動神経が良いのかもしれない。





「ここなら良いかもな」

「しっしし、ど…っ早、い…!(喉が…っ喉が冷たい…!)」

「けど苗字ついてこれたろ。中々やるじゃねーか」

「く、そくそ宍戸!お前、早いっつーの…!(しかもさり気に名前の手握りやがって!)」



おぉ、岳人くん、噂のスタミナ切れだ!

そんな岳人くんと私がヘロヘロになりながら来た場所は階段の踊り場。

人気がまったくなくて、同じ校内なのかと思うくらいシンとしてる。

こんなところ初めて来た…。



「で、話っつーのが、あるんだけどよ…」



宍戸が話し出す。

そうだよ、私は話を聞くためにここまで走らされたんだった!

どんな内容なのかと思っていると呼吸を整えた岳人くんがさらっとこう言った。



「俺達のマネージャーやってくんね?」

「……………へ?」

「俺らそろそろ関東大会なんだけどよ。安心できる奴にサポートしてほしいんだよ」

「苗字、一応レギュラー全員とは面識あるだろ?」

「それに、名前は俺らに変な接し方とかしねーしさ!」

「レギュラーもお前のこと知ってるし」

「つーか、その…俺は名前にサポートしてほしいなぁ、とか思ってるんだけど…」

「苗字はちゃんと仕事するしな」



2人一緒に話すから聞き取れないのではなく、とんでもない話に私の目はテンになった。

かなり前にジローからも誘われたけど…まだ続いてるのかな、マネージャーの数争い。

遠い目をして私はその場からダッシュで逃げた。

ここまでくるのに走ったのよりも、速く。



「え、あ、おい!苗字!」

「名前ー!!」

「…なんだ?いきなり」

「名前が転入してかなり経ったってのに………話、ちがくね?」





神尾アキラのようなスピードで教室まで走り、勢いよくドアを開けて自分の席に座った。

すると心が駆け寄ってきた。

今はドラマの話よりもさっきのことを相談したい…!



「おはよう、名前。どうしたの?ドア、壊れそうなくらい勢いよく開けて。しかも息まできらして」

「心おはよう!あのね、聞いてほしいことがね、あるんだけどね…!」

「うんうん、どうした?心さんが聞いてあげるから落ち着いて」



と、私の動揺を落ち着かせながら話を聞いてくれた。

相槌を打ってくれるだけなんだけど、それだけで私はすっきりした。



「なるほどねー…そうゆうこと。確か前にも来たわよね?芥川だっけ…」

「うん。けどなんで今になって…あぁ…」

「(名前は可愛いし、責任感あるし、仕事はきっちりこなす真面目な性格してるし、レギュラー共に媚びないからその辺のミーハーなマネ希望の子ばかりのテニス部からしたら欲しい人材よね)」

「どうしよう、心。…あ、岳人くんと宍戸置いてきちゃったけど…怒るかな…」

「怒んないわよ、絶対。もしそんなことがあったら私が潰すわ。それにしても、マネージャーへの勧誘、まだ続きそうね」

「え」





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