「名前!おはよう!」



教室に戻ると心が私の席に座って、そこから大声で挨拶をしてくれた。

私を待っててくれたのかな?



「おはよう、心」

「どこ行ってたの?鞄はあるのに名前が居ないから心配したのよ!」

「そんな大袈裟な…」

「コイツ、俺に探しに行けってうるせーんだ」

「ご、ごめんね宍戸」

「苗字が謝ることじゃねーよ」

「向日が連れ出してたのね…!」

「ちげーよ!俺はただ名前を保健室に連れてっただけだぜ?」

「そうそう」

「保健室?」

「どこかケガしたの?!」



心の心配ぶりにみかねたがっくんが事の事情を早口で喋る。

それを聞いた2人の反応は違うものだった。



「忍足?!」

「激ダサだな」



忍足の登場に驚く心と、こけたことをダサいとゆう宍戸。

宍戸はいいとして、なんで心は忍足に驚くんだろう?

今まで同じ学校にいたんだからそんな必要ないのに。



「忍足、名前に目つけてないでしょうね?!」

「さぁな」

「分かんないの?!パートナーでしょ!?分かりなさいよ!」

「無茶ゆうなよ!!」



心とがっくんがそんな話をしていたのを私は知らない。





朝のバタバタから時間は経って今は放課後。

今日は宍戸と図書委員の仕事をする日。

部活へ行く心とがっくんを見送ってから図書室へ向かった。



「宍戸くんと苗字さんね。2人には本の返却作業をしてほしいの」

「返却作業?」

「貸し出されて戻ってきた本がそこのラックにあるから、その本を棚に戻すとゆう作業よ」

「分かりました!宍戸、頑張ろうか!」

「おう」



効率を良くするために二手に分かれて作業を始めた。

思ってたよりも楽しいかも!



「(夏目漱石…な…な…あ、ここだ!)」



夏目漱石のコーナーにつき、「坊っちゃん」を棚に戻す。

………戻す。



「(届かない…!)」



手を伸ばし、つま先立ちをしてやっとその棚に届くくらいで、本を戻せる余裕がない。

踏み台も生徒が全部使っている。

後回しにしようかと思ったとき



「え?」



誰かが私の後ろからその本の背を押して戻してくれた。



「すみません。ありがとうございます!」



予想外のことに驚きつつもすぐさま振り返ってその人に礼をゆう。

と、私は目を見開いた。



「いえ」



日吉若ー!!!

日吉は冷めた口調でそうゆうと踵を返した。

びっ、びっくりした…!!

叫びそうになったのを抑えた自分を褒めてあげたい!

などと考えていると司書さんが私の元へやってきた。



「苗字さん?」

「は、はい!」

「私ちょっと職員室へ行くから受け付け、お願いできる?」

「受け付け…」

「ええ。バーコードを当てて、返却日が書いてある紙を貸し出しする本に挟んで渡すだけだから」

「はい!分かりました!」



司書さんの説明を聞いていても内心ドキドキしっぱなしだった。





「あれ、受け付けしてんのか」

「うん。司書さんと交代!」



受け付けで座っていると空になったラックを押して宍戸が戻ってきた。

もう終わったのかな…仕事速いなぁ。



「受け付け出来んのか?」

「うん!やり方教えてもらったし、きっと大丈夫!」

「そうか。じゃぁ苗字の分の本、返してくる」

「大丈夫だよ!司書さん戻ってきたら私やるし…」

「残り少ししかねーし、気にすんな。な?」

「…うん…ありがとう!」



宍戸が私の代わりに返却作業へ戻った。(申し訳ない…)

それからしばらくすると「お願いします」と、本の貸し出しを申請する人が来た。

返事をして本を受け取る、が。



「あっ…(やばい!声に出ちゃった…!)」

「?」



「その人」が日吉だったから思わず声に出して驚いてしまった。



「さ、先ほどはどうも…ありがとうございました…!」

「いえ。別に」

「若じゃねーか」

「先輩。…図書委員なんですか」

「ああ。似合わねーだろ」



作業を終えた宍戸(やっぱり仕事速いな!)は日吉を発見して声をかけた。

うわぁ…すごーい、感動!

なんて見てる場合じゃないね!

受け付けの仕ちゃんと事しなくちゃ!

バーコードを当て、返却日の紙を挟む。



「ど、どうぞ…1週間後までに返却、ぉ、お願いします…!」



なんてこった…噛み噛みだ…!



「これから部活か?」

「はい」



日吉はそう言って図書室から出て行った。

し、心臓、破裂しそう…。



「なんでそんなテンパってんだよ」

「さ、さぁ?き、緊張したんだよ、うん、緊張」

「俺も仕事終わったし、受け付け手伝ってやるよ」

「ごめんね、仕事させてばっかり…」

「何言ってんだよ」



と、宍戸は笑う。

良いお兄ちゃん…!










キーンコーンカーンコーン…


部活開始時間を知らせるチャイムが鳴る。



「2人ともお疲れ様。日誌書いたらもう帰っても良いわよ」

「はーい!それじゃぁ失礼します!」





「よし、じゃぁ宍戸は部活行きなよ」

「いや、日誌置きに職員室行かなきゃなんねーだろ?」

「それは私がやっとくよ!宍戸は今日たくさん働いたからね」



私なりに無理を言わせない勢いで言い放った。

それが伝わったらしく宍戸は「分かった」と返事をしてくれた。



「んじゃ頼むわ。悪ィな」

「いえいえ!部活頑張ってねー!」

「おう。サンキュ」



少年よ、テニスボールを存分に追いかけてくれたまへ…!



「(おっと。変なこと思ってないでさくっと職員室行かなくちゃ!)」



職員室のある階を目指して階段を下りる。

タタタン タタタンと自分なりのリズムに乗って。



「(リズムに乗るぜー!)」



けどそれが仇となり、



「や、ば…っ」



階段を踏み外してしまった。

下からだいたい4・5段目とゆう低めのところだけど怖い。

落ちる衝撃に備えて体を強張らせる。

が、その衝撃は感じられず、かわりに暖かい感覚が伝わる。



「え…?」

「大丈夫、ですか」

「かっ…」

「?」



樺地だ!

落ちると思ってた私は樺地に抱きとめられていた。

しゃがんでいた樺地は私を立ち上がらせてくれる。(力持ち…!)



「ご、ごめんなさい!ケガとかしてない…?」

「ウス」

「(生ウス…!)本当に、大丈夫?」

「ウス」



そう言って樺地は階段を上がる。



「待って!」

「…」

「助けてくれてありがとう!おかげで無傷です!」

「どう、いたしまして」



樺地、良い子…!





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