いつもみたいにテニスコートに行くための近道のグラウンド、の はじっこを歩いてた。



「ふぁー…ねっむーぃ…」



最後の授業が古典なんて、俺を眠らせて(いつも寝てるけど)部活をやらせない気だ!

なんて思っちゃうくらいその授業が眠くて、いまだに眠気を引きずってる。(これもいつものことかも!)

………………んー…それにしても本当に眠いC!

そんなことを思いながらだらだら歩いていると声が聞こえた。

自然と会話が耳に届く。



「へぇ…ずっとやってるんだね」

「ええ。…それでね、名前」



名前ちゃん!?

声と名前を聞いて俺の眠気は全部吹っ飛んだ。

名前ちゃんとは始業式の日、朝練をサボって寝ているときに出会った。

つっかえる言葉と笑顔をみて、俺は名前ちゃんのことが好きになった。

単純?違うよ。名前ちゃんの笑顔がハンパないんだよ!

その笑顔を見たとき、こう、なんてゆうか、心臓をわし掴みにされたような!



「一緒にマネージャー、やらない?」



思いがけない言葉に思考が止まる。

よく見れば名前ちゃんの隣にいる子、氷帝の三大美女に選ばれてる子だ。

名前は分かんないけど、サッカー部のマネージャーだったはず。

ってことは名前ちゃんがサッカー部のマネージャーに…?

そんな、そんなのイヤだ!

俺のじゃないけど…名前ちゃんを渡したくない!



「名前ちゃん!!」



勝手に体が動いて、いつの間にか名前ちゃんが目の前に。

会ったのはこれで2回目。

だから喋るのだって2回目。

なのに



「ジローちゃん!?」



名前で呼んでくれた!やっべぇ嬉しい!

俺の名前覚えててくれたんだよ!俺のこと覚えててくれたんだよ!

少ししか喋れなかったのに!!

マジすっげー嬉Cー…って今は喜んでる場合じゃない。

びっくりしてる名前ちゃんにかまわず、三大美女サンに許可をもらって連れ出した。







「あのさ、名前ちゃん」



いきなり連れて来られたと思ったら、私に向き直って真剣な顔つきのジロー…じゃなくって芥川くん。

なんだろう、私なにかしたかな…!?



「名前ちゃん、サッカー部のマネージャーになるの?!」

「え!なんで知ってるの?!」

「あ、ごめん!違うの!あのね、話し声が聞こえちゃって…」



ごにょごにょと口ごもる芥川くんはちょっと恥ずかしそうに下を向いた。

ひい…!中3男子なのにこの可愛いさは反則ですー!レッドカード!



「で、どうなの!」



ずい、と顔を近づけてくるから今度は私が恥ずかしくなって下を向く。



「心には申し訳ないんだけど、断ろうと、思って、ます…」

「マジ?!そっかー良かったー!」



何でそんな気になるんだ?

サッカー部とテニス部でマネージャーの人数を競ってるとか?……まさかねぇ。



「じゃぁさ、名前ちゃんテニス部のマネやんない?」

「…………………え。へ?!ちょ、ま!」

「あははははは!落ち着いてよ名前ちゃーん!」

「だ、だっていきなりでびっくりして…」

「ごめんねー!どう?やんない?テニス部マネ。ってゆーかやってほC!」

「むっ無理無理無理!私じゃ無理だよ!足手まといだよ!」

「俺が仕事内容教えてあげるからさ!」

「けど…」

「おねがーい!」

「でも…氷帝に来たばっかりの私じゃ、なんか、だめだと思う…から」

「…どうしても?」

「うん…ごめんね、せっかく誘ってくれたのに…」



頭を下げてそう言うと芥川くんがすぐ私の肩に手を置いてそれを阻止した。



「仕方ないから今回は諦める!けど必ず名前ちゃんをマネにしてみせるから!」

「芥川くん…」

「氷帝に来たばっかで、ってのが理由なら 夏!夏くらいなら大丈夫でしょ!」

「…うん。そうだね!」

「!…じゃぁ今回諦める代わりに1コ、俺のゆうこと聞いて?」

「うん!私に出来ることなら!」



優しいなぁ…断った私が気を使わないようにしてくれてるのかな…。



「えっとね、俺のこと名前で呼んでほC!」

「名前?」

「うん!だからもう苗字で呼ぶの禁止、ね!」

「分かった!」

「うん!じゃぁ俺部活行くね。ごめんね、連れ出しちゃって!」

「ううん、全然!…ま、またね ジローくん!」

「(ぅわぁあ…!嬉C…!)うん!またね!」



手をぶんぶんと振って走ってくジローくん。

…まさかテニス部のマネージャーに誘われるとは思ってなかったから、まだどきどきしてる。

今日だけで2つの部活から勧誘されるなんて、やっぱりマネージャーの人数でも競ってるんじゃないかな!?





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