俺がコートに戻ると、休憩時間の終了を告げる跡部の声が響いた。

あっぶねー時間ギリギリ…跡部にどやされるところだったぜ。



「岳人」

「ぅ、お!な、何だよ侑士!おどかすなよ!」

「すまんすまん」



と、侑士は笑いながら言った。

謝ってるくせに笑顔かよ!



「で、何だよ?」

「あんな、休憩時間中にレギュラーのミーティングがあったんやけど、岳人居らんかったやろ」

「あぁ…」

「やから俺が岳人にミーティングの内容を伝えなと思てなぁ」

「そっか。サンキュー侑士」





侑士が内容を話し終わったから、俺は自分の練習に戻ろうとした。



「…岳人」

「ん?」

「なんかエエことでもあったんか?」

「は?!な、何でだよ!」

「焦っとるところを見ると怪しいなぁ?」

「焦ってなんかねーよ!…何でそう思うんだよ」

「そりゃぁ、ダブルスパートナーやし?」

「ごまかすなよ!それにキモイことゆうな!」

「き、キモイて…」

「で、何でそう思うんだよ」

「…何か嬉しそうやなぁ思て。ずっと笑とるやん」

「んなわけねーだろ。侑士の勘違いだよ、それ」

「…ふぅん。まぁそうゆうことにしとこか」



そう言って侑士は自分の練習に戻っていった。

やっぱり侑士は鋭い、侮れねーな…。

てか俺が分かりやすいだけなのか?そんなに顔に出てたか?

名前と喋れたことも、名前を呼び合うことになったのもすっげー嬉しかったから、その感情が滲み出ちゃってるんだろうな。

俺の名前をつっかえながら呼んでくれる名前が可愛いくてしょうがなかった。

休憩時間とゆうことに気遣って、「休んで」と言ってくれたことが嬉しかった。

どんどん名前のことしか考えられなくなる。



「…やべぇよなー…」



俯きならが呟いた。







「おはよう、名前」

「心!おはよう!」



朝、私が1人で学校へ向かっていると心が後ろから私を呼んだ。

心もこの通学路だったんだ!



「ねぇ、名前」

「ん?」

「今日の放課後って暇?」

「うん。とくに予定はないよ」

「じゃぁ私の部活、見に来ない?」

「良いの?行く行く!」



心と喋りながら歩いているとあっとゆう間に学校に着いた。

1人で歩くとすごく長く感じたんだけどなぁ。

そして教室に入って、自分の席に目を向ける。



「…………うそ」

「? どうかした?」

「ううん…。心、私の席の横の人って…?」

「あぁ、ほら、先生が言ってたじゃない。昨日休みだったのよ」

「(そういえば言ってたな…)そうだったんだ」

「見かけは怖いかもしれないけど、イイ奴よ。安心して」



そう言って微笑んで、彼女は自分の席に着いた。

私もゆっくりゆっくり自分の席へ歩いて行く。

気付かなかったけどそこにはがっくんも居る。

同じ部活だもんね、仲良しなんだよね!

私は小さく深呼吸して、がっくんと私の横の席の宍戸に近寄った。



「ぉ、おはよう、岳人くん」

「! 名前!おはよ!」

「…誰だ?コイツ」

「初めまして。昨日このクラスに転入しました。苗字名前です。よろしくお願いします!」

「…宍戸亮だ。よろしく」

「ちょっと宍戸。もう少し笑顔ってもんができないわけ?名前が怖がるじゃない」

「うるせ」

「てゆうか名前、いつの間に向日なんかと名前で呼び合うようになったの?」

「えっと」

「向日、名前に近付くのやめてくれる?」

「はぁ!?なんで秋野にそんなこと言われなきゃなんねーんだよ!」

「…ははーん。向日ってば名前のこと…」

「うわーうわーうわー!何言ってんだよ秋野!!」



心とがっくんが何やら言い争いを始めていたが、私はそんな2人をほっといて宍戸と喋っていた。





「宍戸、くんは何部なの?」

「テニス部。そこの向日と一緒だ。あと「くん付け」じゃなくて良いぜ」

「宍戸、で良いの?」

「あぁ。その方が慣れてるからな」

「分かった。私は苗字で良いからね!」

「分かってるっつーの」



言いながら宍戸は笑った。

いいねぇ…爽やかスポーツ少年っぽい!



「宍戸、髪すごく綺麗だよね」

「そうか?ありがとよ」



私はじっと宍戸の髪を見つめていた。

これがあの宍戸のポニーテール!生で見れるなんて光栄だ…!

授業中、隙があったら見ちゃいそう…。

みつあみとかしてもサラサラだから跡とかつかないんだろうなぁ…うらやましい!



「(他の女は馴れ馴れしくこの髪触ってきたりすんのに、コイツはじっと見てるだけなのか…)」



宍戸がそんなことを思ってたのは、当然私は知る由もなかった。





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