大好きな氷帝レギュラーをこの目で見るために氷帝を選んだんだから、ね!

そう意気込んでみたけどコートの場所が分からないんじゃぁ始まらない。



「誰かに聞くしかないよなー…」



そう考えていたそのとき。



「きゃー!跡部様ー!!」

「忍足先輩ー!!素敵ー!」

「頑張って!向日くーん!!」

「鳳さーん!!ナイスサーブ!」

「かわいいー!ジローちゃーん!!」


「…あっちか」





声をたどって来てみると、コートの周りのフェンスに群がる女の子達が居た。

…氷帝のものじゃない制服をまとった子がちらほら居るのは気のせいじゃないよね?

他校生まで見に来るなんて、本当に氷帝レギュラーは人気なんだね。

そんな熱狂的なファンの中で見学するのは怖いので、遠くから見学させていただくことにした。





「ここなら人気ないし、目立たないし、コート内見えるし、ばっちりだね!」



そういえばさっきの声援の中に宍戸を応援するものがなかったけど、なんでだろう。

今は新学期が始まったばかりで、宍戸と橘さんは試合してないからレギュラー落ちしてないし…。

…あれ、そういえば宍戸はどうやってレギュラー復帰したんだっけ?滝くんと試合して、勝って…。


私は悶々と考えていたせいで人が近付いてきていることに気付かなかった。



「あ…、苗字?」

「(けど監督は日吉をレギュラーに指名したから…宍戸が頭を下げて鳳が説得して跡部も頼んだんだ…)」

「(無視?!)あのー、苗字?聞こえてる?」

「(確かこんな風だったよね。漫画もっと読み返しとくべきだったー!)」

「おい苗字!!」

「ぎゃあ!」

「(ぎゃあ、って…)お前、こんな所で何してんの?」



そこには氷帝ジャージを着た向日岳人が居た。

前髪とかから水が滴ってるけど…どうしたんだろ。



「む、向日くん、だよね。どうしたの?」

「聞いてるのはこっち。ってゆうか苗字、俺の名前覚えたのか?」

「うん!」

「そ、そっか。サンキュ!」

「向日くんも私の名前覚えててくれたんだね。ありがとう」

「あ、当たり前だろ!で、苗字はこんな所で何やってんだ?」

「えーっとね、なんか物凄い女の子達の声が聞こえたから気になってたどってみたらここに出て…(ナイス言い訳!)」

「あぁ、なるほど」

「皆何を見て叫んでるのか考えてたから向日くんに気付かなくて…ごめん」

「別にいーぜ?気にすんな」

「ありがとう。向日くんは?何してたの?前髪濡れてるけど…」

「俺は部活で汗かいたから顔洗いにきたんだ」

「そうだったんだ。大変なんだね、部活」

「んーまぁな」

「…あ、もしかして今休憩時間中?」

「そうだけど、なんだ?」

「じゃぁ私なんかと喋ってないでちゃんと休まなくちゃ!」

「え、あ、あぁ…」

「よし。じゃぁまた明日ね、向日くん!部活頑張ってね!」

「おう…」



私は一方的に言い放ってがっくんに背を向けた。

だってあの氷帝テニス部の練習だよ?!

どんな練習してるのか知らないけど…きっと大変だよ。

だからちゃんと休まなくちゃ。

それにしても…私がっくんといっぱい喋っちゃった…!

可愛いし格好良いし…直視できないって…!

1人で悶えていると、誰かが私を呼んで腕を掴んだ。





「苗字!」

「ぇ、何?!あ、向日くん」

「あ、あの、さ…」

「どうしたの?そんな息きらして(息あがっちゃってるよ可愛いいいい!)」

「あの、さ…」

「ん?」

「えーっと、さ」

「うん?」

「これから俺のこと名前で呼んで!」

「な、名前…?!」

「そう。…ダメか?」

「…岳人くんって呼んで良いの…!?」

「俺は呼んでもらいてーの!それに、俺も苗字のこと名前って呼ぶから」

「え?!(恥ずかしい…!)」

「やっぱダメか?」

「ぜ、全然全然!嬉しい…ありがとう!」

「お、おう!」

「じゃぁ…また明日、岳人、くん?」

「じゃぁな、名前!!」



そう言ってがっくんはコートの方へ戻って行った。

名前で呼んで良い許しを貰ってしまった…!

岳人くん、岳人くん、岳人くん、岳人…は、恥ずかしい。



「名前で呼ぶの恥ずかしいし…明日「がっくん」で良いか聞いてみようかな…」



それにしても…



「(ドキサバか…!?)」





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