私の彼氏は自分でケーキを作るくらい、甘いものが大好き。



「ブン太ブン太!今日はチョコチップクッキー持ってきたよ!」

「マジで?うっひゃー!美味そー!」

「味見はしたけど…口に合うかな…」

「何言ってんだよ!この前作ってくれたマドレーヌも美味かったんだからクッキーも美味いに決まってんだろぃ!」



と言ってブン太は美味しそうに私が作ったクッキーを食べてくれてる。

これが嬉しくてよくお菓子を作ってあげるんだけど…テニス部レギュラーだし、あげすぎはよくないよね。

筋肉が脂肪に変わっちゃう…!



「名前はお菓子作りの天才だぜぃ!」

「天才なのはブン太じゃなかったっけ?」

「ボレーのな!お菓子作りの天才は名前に譲るぜぃ」

「やったー!」

「にしても俺の誕生日が楽しみだぜぃ!名前、お菓子作ってきてくれんだろぃ?ケーキとか?」



………………………………………なに、それ。

確かに、ブン太の誕生日にはケーキ作ってこようって思ってたけど…それだけが楽しみなの?

おめでとうの言葉じゃなくって、ケーキの方が嬉しいの?

ブン太は甘いもの大好きだからしょうがないのかもしんないけど…。

私が頻繁にお菓子作ってくるようになったからしょうがないのかもしんないけど…。



「私…おまけ…?私より、お菓子…?」

「は?」

「ばかっ!」



と言い放って私は逃げた。










「…悪いことしちゃった…」



あれ以来、私はブン太を避けるようになった。

電話も出ないし、メールの返事も返さない。

今更申し訳なくて…返せ、な…い…。

勝手な被害妄想して勝手に怒って、私、どうかしてた。

だから謝ろうと思って部活をのぞきにきたんだけど…ブン太の様子がおかしい…ような気がする。





「丸井せんぱーい。大丈夫スかー?」

「ククッ…だらしないのぅ」

「これで3日目ですね」

「理由はやっぱ…」

「苗字である確率100%」

「部活に影響するとはどういうことだ。たるんどる」



最近の丸井からはやる気がまったくと言っていいほど感じられない。

ベンチに座っているか、ネットの前で立ちつくしているかのどちらかだ。

ダブルスパートナーのジャッカルからしたらいい迷惑だろう。

俺には良いデータ収集になるので問題はないのだがな。

死んだ魚の目をしながらつぶやく言葉は「名前」の一言。

察した赤也が丸井をからかってみるもののなんら反応がなく10分でその遊びに飽きていた。

真田も呆れ果て、怒鳴る気も消え失せたそうだ。

まったく…苗字は丸井に何をしたんだか…。





「ブン太…どうしたんだろ…」



ずっとベンチに座ってる。

元気なさそうだし…どうしたんだろう、具合悪いのかな…。

とりあえず部活終わるの待っとこう。





「あ!苗字さんじゃん!」

「切原くん…」

「こんなところで何をしている」

「丸井待ちに決まっとんじゃろ」

「ご、ごめんね真田くん。仁王くんの言う通りです…」

「部室には丸井しか居ないから入っても構わないぞ」

「風邪をひいては大変ですしね、入った方が良いですよ?」

「ありがとう柳くん、柳生くん」

「丸井を頼むぞ…」

「あ、ごめん桑原くん!練習になってなかったね…」

「ケンカもほどほどにしんしゃい」



仁王くんは頭を撫でてみんなと一緒に帰って行った。

みんなに迷惑かけちゃったな…。



「謝らなきゃ」


コンコン



ノックしてゆっくりドアを開けた。

するとドアに背を向けてベンチに座っているブン太がいた。

落ち込んでる背中してる………罪悪感が………。



「ブン太…」

「っ! 名前!」

「あの…大丈夫?部活中ずっとだるそうだったけど…具合悪いの?」



私の質問には答えずブン太は私を抱きよせた。



「?! ぶん…」

「俺、確かにケーキ…つーか甘いもの大好きだけど、1番好きなのは名前だから…」

「ブン太…」

「1番はお前なの。おまけとか…思ったことねーよ…」

「…………」

「けどそういう風に思わせちまったならごめん。謝るから、もう怒んないでくんね…?きつい…」

「ブン太、私、あの…」

「?」

「ごめん、ブン太。ばかとか言って…勝手に怒ったりしてさ…私が悪いんだよ。ブン太が謝ることじゃないから……………泣かないで?」

「なっ泣いてねーし!」

「あははははは!ひっかかった!」

「…………」

「ああ!ごめん!冗談です!…ごめんね、ブン太」

「…おう」



無事仲直りを済ませた私たちは仲良く一緒に帰った。



「今までで1番美味しいケーキ作るからね!」

「おう!待ってるぜぃ!」





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