「名前ちゃん」



かわいいかわいい俺の名前ちゃん、



「なに?きよ」



すごくやさしい俺だけの名前ちゃん、



「あのね、名前ちゃん、」



でも、ごめんね、



「うん、どうしたの?」



もう、手離すことにする。



「俺、名前ちゃんのこと 好きじゃなくなっちゃった」




















「…………え?」



俺の言ったことがうまく理解できないみたい。

名前ちゃんは目をまんまるくしたまま動かなくなってしまった。

さっきまで一生懸命プリントの問題解いてたのに…可愛いなあ。



「ご、めん…きよ…あの、意味が、よく…」


「わかんないよね、急なことだもんね、ごめんね」


「……………ゎ、私の、こと…」


「うん、好きじゃなくなっちゃったんだ」



シャーペンを持つ手も止まったままの名前ちゃん。

そんな名前ちゃんにこんなこと言うなんて、俺もひどい男だな。

分かっててやってるなんてなおさらタチ悪いよね。

俺に2回も同じことを言われた名前ちゃんはそのまま動かなくなってしまった。

そんなことにも構わず俺は話を続ける。



「いやー実はさ、氷帝の子に告白されちゃって」

「その子がすんごい可愛いくってさ」

「あ、1つ年下の子なんだけど」

「すっごく気のきく優しい良い子でね」

「それで―――」



俺の口からたくさん嘘が出てくる。

あれも嘘、これも嘘。

全部うそ。

だれに告白されたって、どんな美人や可愛い子に言い寄られたって、

俺は名前ちゃんにしか目がいかないよ。

どんなに優しくったって、大和撫子のような女性でも、

俺は名前ちゃんにしか興味ないよ。

全部うそだよ、うそばっかだよ。

うそをついて、ごめんね。



「で、俺はその子と付き合おうと思って」



ほんと、俺の口はよく回る。

自分でもびっくりするくらいだよ。

べらべら喋り続ける俺を映しているそのきれいな瞳から、ついに涙があふれてきた。

ああ、泣かせちゃった。

こうなることは分かってた。

けどほんとに泣いてるのを見ちゃうと、苦しくなる。

今まで泣かせないために守ってきたのに。

今まで傷つかせないために守ってきたのに。

自分で傷つけて泣かせてるなんて、自分が憎い。

…あーあ、なんでこんなことになっちゃったんだろ。

っていっても原因は俺にあるんだけどね。

俺が名前ちゃんを好きになりすぎちゃったんだ。

それがだめだった。

誰にも見せたくない。

誰にも触らせたくない。

誰とも話させたくない。

俺はいつもそう思いながら名前ちゃんのとなりにいた。

俺はその感情を隠してるから、名前ちゃんは気付かない。

気付かないから、名前ちゃんは俺以外の人と手もつなぐし、話しだってする。

だから俺の感情は高まっていくばかり。

このままいけば、きっと俺は名前ちゃんをどこかに閉じ込めてしまう。

自由すら奪っちゃって、どこにも行かせずに、ずっと俺のとなりにおいとくんだ。

そんな自分が目に浮かぶ。

名前ちゃんを苦しめるのは嫌だ。

だから手離す。

たとえ、今傷つけることをしてでも。



「だから、名前ちゃん、別れよ?」



たとえ、名前ちゃんに嫌われたって。

俺といたらだめになってしまう。

そうなるより、全然マシだよ。

俺は俺の人生の中で1番!ってくらい、心にもないことを言ってる。

だからかな、



「……あれ…」



勝手に涙がでてきた。










うそつき





もどる







「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -