「名前」

「んー?」



私が跡部の部屋のベッドで寝転びながら雑誌を読んでいると、跡部が私を呼んだ。



「何?」



そう言って跡部の姿を目で追えば私の横に腰掛けていた。



「お前、なんか欲しい物とかしてほしい事とか無ぇのか?」



唐突にそんなことを言われたので思わず



「は?」



と、言葉を返してしまった。



「は? じゃねぇよ。何か無ぇのかって聞いてんだ」

「…いきなりどうしたのさ跡部」

「別にどうもしねぇ。つーか俺の質問に答えろ」



と、跡部が真剣に迫ってくる。(どうしたんだ)



「んー、そうだなぁ…スペースシャトルが欲しいです!」

「スペースシャトル?…本当にそれが欲しいのか?(お前そんなデカイのどこに置く気だ)」

「うん!欲しい!格好良いじゃん?あと、ネズミが住んでるアノ国も欲しいなぁ!それからねー…」



こうやってふざけた返事を返していれば、跡部も呆れてこんなこと聞かなくなると思って言ったのに、



「分かった。じゃぁ俺様が名前のために欲しい物全部買ってやるよ」



本気にしやがりました。



「え?!ちょ、は!?何言ってるの!無理だって。無理無理」

「ッハ。跡部家の財力をナメんなよ。スペースシャトルもネズミの国も、何でも買ってやれるぜ」



…そうだった。

跡部は本物の金持ちなんだった…!



「すみませんごめんなさい跡部様。嘘です!そんなの欲しくないです!」

「…チッ。嘘かよ。じゃぁ何が欲しいんだ?何でも買ってやるから、遠慮なんかすんなよ」



遠慮なんかしてないよ…!と、心の中で叫ぶ。

本当にどうしちゃったの、跡部。

いつもとなんか違うよ?



「…なんでそんなこと聞くの?」



何かあったの?



「…別に、なんでも良いだろ」

「いやいやいや、良くないやい!教えてよ、どうしたの?」

「どうもしねぇ」

「跡部」

「だから、何も無ぇよ」

「跡部」

「……名前が俺に何も頼まないからだ」

「え?」



どうゆうこと?



「名前は俺に「あれが欲しい」とか「あそこに行きたい」とかワガママっつーか…そうゆうこと言わねぇだろ?」

「俺に何も頼まないだろ?だから、言わねぇなら聞くまでだと思って聞いただけだ」



それだけだ、と跡部は目を伏せた。



「跡部…」

「名前が喜ぶことをしてやりてぇからな」



確かに私は跡部にそうゆうことを求めない。

ましてや、そうゆうことを考えてる訳でもない。

ただ、跡部と一緒に居れるだけで十分なんだ。



「…跡部」

「?」

「私ね、跡部と同じ時間を横で過ごせるだけで嬉しいんだよ」

「だけどそんなんじゃ」



跡部の言葉を遮る。



「跡部の隣に居れるだけで幸せなの、私」



そう言って優しく微笑む名前が誰よりも愛しく、何よりも大切なんだと思いしらされた。



「…そうかよ」



跡部がそっぽを向いて言った。

もしかして、照れてる?!



「…何笑ってんだよ」

「別にー?なんでもないですよ?」

「あ、そ」



優しい顔をして跡部が私の頭を撫でた。



「?」

「名前、これからも 「あ!」 …なんだよ…」

「私やっぱり跡部にワガママ言いたい!」



私のいきなりの発言にきょとん、とする跡部。(レアだね!)

そんな跡部をほっといて言葉を続ける。



「跡部、ずっと私の隣に居てね」



絶対だよ、と付け足して。

言い終わってから跡部の返事を聞くのが怖くなってしまったけど、跡部は



「ああ。当たり前だろ」



と言ってぎゅ、と抱きしめてくれた。





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