「いーやーだー!」
「お願い!なんで?!なんで来てくれないの?!」
「絶対、イ・ヤ!」
今、私はジローとあることについて言い合っている。
それは…
「俺、名前ちゃんが応援に来てくれたら、試合頑張れるもん!絶対勝てる!」
来週、氷帝で行われる他校との練習試合に私が応援に行く・行かないについてだ。
「私が行かなくてもジローなら勝てるって。だってあの氷帝テニス部のレギュラーじゃん。正レギュラーじゃん」
「それは名前ちゃんが居てくれたから俺は頑張れたの!レギュラーになれたの!」
と、ほんの少し怒ったような顔で強く言葉を発するジロー。
なんか…可愛いね。
「大丈夫だよ。私、家で祈ってるから」
「ダーメー!家で祈るくらいなら俺のところまで来て願ってよ!」
「えー」
「えー じゃない!…なんで?なんで応援に来るの嫌なの?」
必死モードからいきなりしょんぼりモードに切り替わってしまったジロー。
…どうしよう…。
「前までは部活のときでも応援しに来てくれてたのに…」
「ちょ、ジロー?」
「ちょっと前から「応援行かない」とか言い出して…なんで?俺、名前ちゃんに何かした?」
「じ、ジローさーん…?」
「俺が悪いなら謝るから…応援、しに来て?」
おねがい…。
そう言ってジローは俯いた。
ああ、私ってば最悪だ。
ジローがあんなに来て来て、って言ってくれてたのに全部断って。
ちゃんと、理由を言えば良かったのかもしれない。
けど…
「…ジロー」
「…何?名前ちゃん」
「今から私が言うこと、笑わないで聞いてくれる?」
「うん」
「じゃぁ…さ」
「うん?」
「今から私が言うこと聞いても、私のこと嫌いにならない?」
「うん」
「絶対?」
「うん」
そう言ってジローは私を見ながら微笑んでくれた。
「あ、あのね…氷帝テニス部のレギュラーにファン、たくさん居るでしょ」
「ジローにも、ファン、たくさん居るでしょ?」
「毎日毎日、部活の応援しに来てくれてるじゃん、皆」
「公式な試合のときでも応援しに来てるから、そのー…」
「私が応援しなくても、他の子達が居るから、大丈夫かなぁ、と思って…」
こんなことを考えてるなんてジローが知ったらどう思われるか怖かったから、言えなかった。
「それっていわゆる…」
「…?」
「嫉妬、ってやつ?」
「そ、そうとも言いますね」
「っマジマジうっれC!!」
「…は?」
え、嫉妬ってうざがられるものなんじゃないの?!
前に友達から借りた雑誌にはそう書いてあったよ?!
「嫌じゃないの?嫉妬、されるの」
「ぜんっぜん!すっごい嬉しいC!俺ばっかり名前ちゃんのこと好きなのかと思ってたから、だから…とにかくすっごい嬉C!」
「そ、そんな!私だってジロー大好きだもん!」
勢いあまって私がそう言ってしまうと、ジローが抱きしめてきた。
「俺も名前ちゃん大好きー!」
「ちょっと、ジロー!離せー!」
するとジローは抱きしめる力を強めた。
「…あのね、俺、誰でもいいから応援されたいわけじゃないんだよ」
「名前ちゃんが応援してくれるから、頑張れるの」
「名前ちゃんじゃなきゃ、ダメなの」
「分かってくれた?」
そう言って、また微笑んでくれた。
配布元 BLUE TEARS
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