ブルーサファイアに欲情 | ナノ





とくんとくん、と自分のものではない鼓動が聞こえて、三橋はぱちりと目を開いた。



春とは名ばかりの、寒い、初春の朝。

朝日がのぼるにはまだ間がありそうな、薄暗い部屋の中。耳鳴りがしそうなほど静かな時間に、耳に滑り込んできたやわらかい音。



開いた目にまずうつったのは、さらさらと流れる黒い髪だった。三橋の目と鼻の先には、くっきりと太く浮き出た鎖骨。

向き合って抱きしめられたまま眠っていた為に、顔と顔とがひどく近い。



なんだかとても気恥ずかしくて、少し態勢を変えようと傾げた三橋の顔が、目の前の首筋に触れた。

唇に一瞬、彼の鎖骨の熱さが残る。



「ぅ、え?」



途端に、ぐるりと視界が反転。

目にうつるのは、自室の天井。
それと、まだ眠そうに目を細めた泉の、少し意地悪い笑顔。


自分の顔の両脇に手をついて見下ろす彼は、薄暗がりのなかでしなやかに跳ねる獣に似ている。


下から見上げる三橋の、回転の悪い寝起きの頭がようやく、押し倒されたのだと判断を下した。



「……起きるなり首筋にキスなんて、ずいぶん積極的じゃん」


「違、んっ」



誤解だと発しかけた言葉の続きは、ぱくりと泉に飲み込まれてしまう。
それでもつい、三橋は条件反射で目を閉じた。


唇から口内に侵入した温い舌が、敏感な粘膜を容赦なく刺激する。

上顎をひと舐めして、くまなく歯列をなぞり、引っ込みそうになる三橋の舌を易々と捉え、甘く噛んで。

激しくも優しい、いつもの、泉のキスだ。



深く絡めて吸い上げられ、否応なしに、自分の身体がふわりと熱くなっていくのが分かった。



口を離した泉がぺろりと唇を舐めて、笑う。


目だけが酷く真剣で、視線は触れれば温度を感じられそうなほどに、熱っぽい。


深いキスのせいで熱に浮かされたような頭のなかで、ああこの目だ、と三橋はぼんやりとそれに見惚れた。



自分を抱こうとする泉の目はいつでも、試合中のように真剣で、だから少し怖くて、でもなんだかとても格好良くて、嫌じゃなかった。


背筋がぞくぞくするような、期待と快楽に満たされる。



「もう一回、しよーぜ」


「え、待っ」


「いやだ。待たない」



三橋が朝っぱらから可愛いのが悪い、と喉の奥で小さく笑って、泉は三橋の胸元に顔を埋めた。


甘えるように頬をすりよせられ、泉の髪が微かに肌を撫でる。くすぐったいその感触に三橋も少し笑みをこぼして、そうっと、黒い髪に指を絡めた。

自分の癖毛とは違い、泉の髪はするすると滑らかで、指先から逃げるように流れる。


泉が少し顔を上げ、ちゅ、と軽い音をたてて白い肌に口付けを落とした。

三橋を優しく見つめながら、肌に触れそうな位置で口を開く。



「でも、三橋が本当に嫌ならしない。身体キツいなら正直に言えよ」


「……泉くん、ずるい」


「なんで?」



そんなに優しい目で自分を気遣ったりするなんて、本当にずるい。


『嫌だ』なんて、泉相手にそんなこと、思ったことなんて一度もないのに。



さっきのキスでもう既に、自分の身体は火照ってしまって、熱くて、泉のすべてが、








ブルーサファイアに欲情




(ほしくてほしくて、しかたがないのに)





















【ブルーサファイアの石言葉:慈愛・誠実】

文献によっては、違うかもしれません。
えろを書いても良いものか、非常に迷った……。



勝手ながら、こっそりと、春期アンケートのコメント一番乗り!(3/1)だった 柚木さまに、一番乗り記念 として 感謝を込めつつ。

アンケートに答えて頂けるだけでも嬉しいのに、コメントまで頂いてしまうと、ほんとうに元気が出ます!わーい!(単純なひとです)


090302

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